第10章 突っ走れ期末テスト!
あの人たちはこれからどこに行くんだろう…と思っていたとき、不意に私の右手に何かが触れた。それは、私の指に絡ませながら…やがてキュッと優しく握ってくれた。それは、消ちゃんの左手だった。
「離れるなよ…さくら」
「はいっ」
そう言えば、昔もよくこうやって手を繋いで家まで帰ってたっけ…でもあの頃はまだまだ子どもで、親代わりと孤児っていう関係だった。でも、今は違う…それがとても嬉しくて、私は消ちゃんの手を握り返した。
「ねえ、消太!何食べに行く?」
ちゃっかり呼び捨てでそう声をかけると、消ちゃんはどこか驚いたような嬉しそうな…そんな顔をしていた。
「…そうだな、ショッピングモールのなかにうまいハワイアンカフェがあるらしい。お前パンケーキ好きだろ。そこに行くか?」
「行きたい!そこにしよう!」
行き先は決まった。そこへちょうど電車が来て私たちは乗り込んだ。平日ほどでは無いものの電車はそれなりに混んでいて、当然座れる椅子はない。私はドアにもたれ掛かる形で電車に揺られた。目の前には消ちゃん。私の後ろにあるドアに手をついて、まるで私に覆い被さるようにしていた。守られてる感があって、少し安心する。でもそうなるほど電車の中は混みあってない。どうしたのかと彼を見れば、一点を目じり視線で見ていた。その向こうにいたのはおそらく同い年くらいであろう男の人数人。こちら…というか明らかに私を見て何やらニヤニヤとしている。
「消ちゃん、どうしたの?」
「…アイツら乗った駅から一緒なんだが、ずっとお前のことジロジロと見ててな。会話を少し盗み聞きしたんだが、どうもお前の事を狙っているらしい」
見覚えはないか、と聞かれたけれど見た感じ中学の同級生でもないし、ましてや雄英高校の人でもない。誰だろう…
「着いたらすぐ降りるぞ。奴らを撒く。」
「う、うん」
消ちゃんにそう言われ、私は目的の駅に着くまでずっとその体勢だった。