第9章 戻った日常
その後しばらく、消ちゃんはまるで私の存在を確かめるかのように抱きしめたまま離れなかった。結局その日の夜はお仕置という名目で、夜の営みに入り…耳元で甘い低音で何度も囁かれて、何度も腰が抜けそうになった。ただでさえ消ちゃんは声が低いのに、更にそこに甘い囁きを加えられては、慣れていない私には致命的だった。
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翌日ーー。
「おはようー!」
久しぶりの学校…いつものように教室に足を踏み入れると…
「「アッハッハッハッハッ!まじか!!まじか爆豪!!!」」
「笑うな!クセついちまって、洗っても直んねえんだ!」
「「アッハッハッハッハッ!」」
「おい笑うな、ぶっ殺すぞ…!」
「やってみろよ、8:2(ハチニイ)坊や…!!」
「んだとコラァアアッ!!!」
ボフッ!
「「戻ったーっ!あっひゃっひゃっひゃ!!!」」
クラスは大盛り上がり。とはいっても、盛り上がっていたのは瀬呂くんと鋭児郎で、ベストジーニストの事務所に体験に行っていた勝己くんの髪型が、8:2になっていて大爆笑していた。さらには勝己くんがキレると髪型がいつものツンツン頭に戻ってさらに大爆笑だ。この3人はともかく、教室では職場体験の話で持ち切りだった。
「へえー!ヴィラン退治までやったんだ!羨ましいなあ!」
「避難誘導とか後方支援で、実際交戦はしなかったけどね」
「それでもすごいよー!」
「芦戸ちゃん、梅雨ちゃん、響香ちゃんおはよう!」
私は教室に入ると、話で盛り上がっていた3人のところに向かった。
「あ、四楓院ちゃん!」
「ケロ…ニュースや緑谷ちゃんたちから聞いたわ。大変だったわね」
「怪我は大丈夫なの?」
「あ、うん…大丈夫って言ったら嘘になっちゃうけど…でも大丈夫だよ!ちょっと手に穴があいたくらいだから!」
「それ大丈夫っていえなくない!?」
私は包帯ぐるぐる巻の右手を見せた。治療中だし、病院からは穴が完全に塞がるまで手首から先は絶対に動かさないように言われている。実践訓練はあまり参加しない方がよさげだけど、単位落とすわけにはいかないし、困っているのも事実。
「ヒーロー殺し…あんな奴と戦うなんて、親の仇だからって無茶し過ぎだよ」
響香ちゃんの言葉に、私は首を傾げた。
「え、どうしてそれを…」
「緑谷ちゃんたちから聞いたのよ」