第8章 〝仇〟(※裏有)
雄英高校の職員室にて…オールマイト、八木俊典のスマホに1本の電話がはいった。相手は、グラントリノだった。
『緑谷出久!まったく!おかげで減給と半年間教育権剥奪だ。まァ結構な情状酌量あっての、この結果だがな…とりあえず体が動いちまうようなとこはお前そっくりだよ俊典!』
「申し訳ございません…私の教育が至らぬばかりで…いやはや…」
『まァ教育権なんざ、今更どうでもいい』
電話をしながら変にペコペコと頭を下げているオールマイトを、自分の机で仕事をしていた消太は、不自然そうに見ていた。さくらを駅のホームで見送って以降、彼女からの連絡が一切ない。忙しいのだろうと言い聞かしてはいるが、なぜかへんな胸騒ぎがずっとおさまらないのだ。消太はポケットからスマホを取り出してLINEを開く。さくらのトークを見ても、やはり既読こそついてはいるが返事は返ってきていない。
『先代…志村との約束…お前を育てる為だけに取った資格だからな。』
「その節はお世話になりました。あなたの教えがあって今の私があるというものです。」
『その割には忘れとったろ』
「いっ…!いえいえ!決してそのような事は!!むしろ記憶を封印していたと言いますか…」
『オイッ!…まァ今回電話したのは外でもない…ヒーロー殺しの件だ…緑谷が言うには、ブロッサム・ロックっつー小娘が、親の仇だとかで殺しにかかっていたそうだ…肝の据わった奴もいたもんだ』
「え…ヒーロー殺しステインが、四楓院少女のご両親の仇ですと?」
「ーーー!!」
耳を傾けていた消太が、その言葉に酷く反応した。彼女が向かったヒーロー事務所は保須市…そしてステインが拘束されたのも保須市。
「(あいつ…まさか…)」
『その分怪我も重傷だった。なにせ右手の甲から手のひらにかけて、やつの武器が貫通して軽く風穴があいてたくらいだ。俺もヒーロー殺しと実際に相見えた時間は数分もないが、それでも戦慄させられた。』
「な…貫通…!?それは、完治するのでしょうか?今後に影響などは…」
『まァ…傷跡は残るだろうな…』
「グラントリノともあろう者を戦慄させるとは…しかしもうお縄になったのに何が…」
ガタン…!
「ん?どうかしたかイレイザー!」