第8章 〝仇〟(※裏有)
「急用を思い出した」
消太はスマホを手に職員室を出ていった。こめかみに嫌な冷や汗を流しながら…。
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『俺が気圧されたのは、恐らく強い思想…あるいは強迫観念から来る威圧感だ。誉めそやすわけじゃねえが、俊典…お前が持つ平和の象徴観念と同質のそれだよ。安い話カリスマっつーやつだ…今後取調べが進めばやつの思想、主張がネットニュース・テレビ・雑誌…あらゆるメディアで垂れ流される。今の時代、善くも悪くも抑圧された時代だ。必ず感化され、人間は現れる。』
「個々で現れたところで今回のようなヒーローが…」
『そこでヴィラン連合だ。繋がりが示唆された…この時点の連合は雄英を襲って返り討ちにされたチーマーの集まりから、そういう思想ある集団だったと認知される。何倍にも何十倍にも膨れ上がる。ハナからこの流れを想定してたとしたら…敵の大将はよくやるぜ。着実に外堀を埋めて、己の思惑通りに状況を動かそうとするやり方。』
「……やな予感はしていましたが…」
『ああ…俺の盟友であり俺の師…先代ワン・フォー・オール所有者、志村を殺し、お前の腹に穴をあけた男…オール・フォー・ワンが再び動き始めたとみていい。』
「あの怪我でよもや生きていたとは…信じたくない事実です。」
『……お前のことを健気に憧れているあの子にも、折を見てしっかり話しといた方がいいぞ。お前と、ワン・フォー・オールにまつわる全てを…』
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