第8章 〝仇〟(※裏有)
保須の事件から一夜明け、私たちはステインによって負わされた怪我の治療のため、近くの総合病院にいた。飯田くんもデクくんも焦凍くんも私も、みんなボロボロだった。冷静に考えるとすごいことをしたと思う…あんな最後を見せられたら、生きているのが奇跡だとさえ思った。
「僕の脚…これ多分殺そうと思えば殺せてたと思うんだ」
「ああ…俺はあからさまに生かされた…あんだけ殺意向けられて、尚立ち向かったお前らはすげえよ。救けに来たつもりが逆に救けられた…わりィな…」
「ううん…違うよ…私は…」
ガラ…
「おォ、起きてるな怪我人共!」
「グラントリノ!」
「マニュアルさん…」
やってきたのは、グラントリノとマニュアルさんだった。
「すごい…グチグチ言いたいが、その前に来客だぜ」
来客?誰だろう…事態が事態だし、雄英の先生とかかな…先生と言えば、この騒ぎ、消ちゃんにも報告されてるんだろうなあ…家に帰ったら間違いなく殺される…!あんだけ無茶するなって言われてたのに…!家帰るのほんと怖いんだけど!!
「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ。」
「面構!!署…署長!?」
「掛けたままで結構だワン…」
名前からしてそのまま。名は体を表す…署長さんの顔や喋り方が犬そのものだった。
「君たちがヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね…ヒーロー殺しだが、火傷に骨折となかなかの重傷で現在治療中なんだワン…超常黎明期…警察は統率と規格を重要視し、個性を武に用いないこととした。そしてヒーローはその穴を埋める形で台頭してきた職だワン。個人の武力行使…容易に人を殺められる力…本来なら糾弾されて、然るべきこれらが公に認められているのは、先人たちがモラルやルールでしっかり遵守してきたからなんだワン。資格未取得者が保護管理者の指示なく個性で危害を加えたこと…例え相手がヒーロー殺しであろうとも、これは立派な規則違反なんだワン。キミたち4名及びプロヒーローのエンデヴァー、マニュアル、グラントリノ…この7名には厳正な処分が下されなければならない。」
「待って下さいよ」
「轟くん…」
「飯田が動いてなきゃネイティブ(地元ヒーロー)さんが殺されてた。緑谷が来なけりゃ3人は殺されてた。誰もヒーロー殺しに気づいてなかったんですよ」