第8章 〝仇〟(※裏有)
「あいつ…エンデヴァーがいないのは、まだ向こうは交戦中ということですか?」
「ああ…そうだ!脳無の兄弟が…!」
「ああ!あのヴィランに有効でないヤツらがこっちの応援に来たんだ!」
その時、今まであまり喋ろうとしなかった飯田くんが、おもむろにデクくんたちに近づいた。
「………2人とも…僕のせいで傷を負わせた…本当に済まなかった…」
そう言って深深と頭を下げ、私も頭を下げる。
「私も…ごめんなさい…誰も巻き込まないつもりだったの…なにも…見えなくなっちゃってた……!仇を討ちたい一心だったーー……!」
「………僕もごめんね。飯田くんがあそこまで思い詰めてたし、四楓院さんもご両親はヒーロー殺しに殺されてたって知ってたのに… 全然見えてなかったんだ…友だちなのに…」
情けない…本当に…。
「飯田…しっかりしてくれよ…委員長だろ」
「……うん…」
今回のステインとの戦いは、時間でいえば5分から10分程度の戦いだった。けれど、私たちにとってはものすごく長い戦いのように感じていた。
「伏せろ!!!」
「え?」
グラントリノが見た空の向こう…そこから異形のものが迫って来ていた。翼が生えた脳無だ。しかしその脳無は左目が抉られ、出血していてうまく飛べていない。
「ヴィラン!!エンデヴァーさんはなにを……!!」
「ーーー!!」
それは、一瞬の出来事だった。気づいたらデクくんが脳無の足につかまれ、攫われていた。
「緑谷くん!!」
「やられて逃げてきたの!?」
ピタ…
頬に落ちたヴィランの血を何者かが舐めてきた。気持ち悪くて逃げると、そこに、ステインの姿がなかった。
「…まさか!?」
「…偽物が蔓延るこの社会も、徒に力を振りまく犯罪者も粛清対象だ…ハァ…ハァ…」
ステインは、空を飛んでいた脳無の脳にナイフを突き刺し、そのままデクくんごと地面に落とした。
「全ては正しき社会の為に…」
ステインの目に、光は宿っていなかった。
「助けた…!?」
「バカ!人質とったんだ!」
「躊躇なく人殺しやがったぜ!!」
「いいから臨戦態勢とれ!とりあえず!」
「なぜひとかたまりでつっ立っている!!」
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