第8章 〝仇〟(※裏有)
ただただ私怨に任せて、相手を倒して自らヒーローへのゆく道を閉ざしてしまっていたかもしれない。ヴィランと同じ道を歩んでしまっていたかもしれない。それが、冷静になってくると怖くなって、ここに彼らが来てくれてよかったと思う。私には、仲間が必要なんだとこの時改めて感じた。
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その後、ステインを拘束した私たちは、裏路地から大通りに出た。
「轟くん、やはり俺が引く」
「お前脚グチャグチャだろう」
「…悪かった…プロの俺が完全に足でまといだった。」
「いえ…1対1でヒーロー殺しの個性だともう仕方ないと思います…。強すぎる…」
「3対1の上にこいつ自身のミスがあってギリギリ勝てた。多分焦って緑谷の復活時間が、頭から抜けてたんじゃねえかな。ラスト飯田のレシプロはともかく、緑谷や四楓院の動きにも反応がなかった。」
確かに、そう言われればそうかもしれない。完全に動きに焦りと迷いがあった…。
「む!?んな…なぜお前がここに!!!」
「グラントリノ!!!」
大通りから聞こえた言葉に目を向けると、そこに居たのは目に黒いマスクをつけたおじいさん…いや、ヒーローがいた。それを見た瞬間デクくんは「げっ」と言った顔をしたけれど、言い訳をする前にその顔に盛大な蹴りをくらった。
「座ってろっつったろ!!!」
ドガ
「グラントリノ!!」
「まァ…よぅわからんが、とりあえず無事ならよかった」
「グラントリノ…ごめんなさい」
彼の名はグラントリノ…昔雄英の教師をしていた方で、当時オールマイト先生の担任教師をしていたらしい。彼もワン・フォー・オールを知る人物のうちの一人で、きっとオールマイト先生からデクくんの話を聞いて、力を受け継いだデクくんを指名したんだとおもう。それにしても、事務所から新幹線に乗ってどこに向かっていたところだったんだろう…
「細道…ここか!?」
「あれ?」
道を挟んだ向こう側に、さらにたくさんのヒーローがいた。
「エンデヴァーさんから応援要請承ったんだが…」
「子ども!?」
「酷い怪我だ…早く救急車を呼べ!!」
「…おい、こいつヒーロー殺し!!?」
ヒーローたちが驚きを見せる中、冷静に対応したのは焦凍くんだった。