第8章 〝仇〟(※裏有)
やがて目頭が熱くなる。頬を流れる水は、雨なのか涙なのか分からない。曇天から降りしきる雨は、虚しい音を立てて地面を叩きつける。空を見上げても視界が歪む。
「…分かってるよ…っ!こんな事したって…お父さんもお母さんも生き返らない…!!でも…これしか思いつかなかった…っ…!!!私が2人にできることは、これしかなくて……っ…!!!」
ついには、声すら言うこと聞いてくれなくなって、私は泣くことしか出来なかった。私は、自分でも呆れるほど泣き虫だ…でも、彼が…目の前にいるヒーローが、泣かない=強いという意味ではないということを教えてくれて、それに甘えて泣いてばかり。両親を殺したヴィランの名がステインと知ってから、私の気持ちは固まっていたし、それに向けてただひたすら頑張ってきた。でもいざ目標を達成すると、酷い脱力感に襲われた。倒したところで両親が生き返らない事はわかっていたはずなのに、何に期待していたのか私の視界はそこにしかなかった。
「四楓院さん…」
「…私はこれから…何に縋って生きていけばいいのよ…!教えてよ……っ」
「………親御さんみてぇなヒーローになる…それが生きる目標なんじゃねえのか」
「!?」
「春風のように暖かい風になるんじゃなかったのか、ブロッサム・ロック…」
「焦凍くん…」
気持ちが落ち着いてきた私に、焦凍くんが歩み寄ってきた。
「生きる目標を見失ったり、恨みが募った人間はそれしか見えなくなる。だが、今確かにお前のなかには、親御さんみてぇなヒーローになりたいっつぅ気持ちがある。なら、それに縋って生きていけばいいんじゃないのか?」
「………。」
「それなら、親御さんも喜んでくれると思うが…あくまで俺の考えだ。あとは、自分で考えて立ち上がれ」
「そうだよ四楓院さん…パヒュームロックもエンジェルスターも、きっとそう言うと思う。だから、こんな事するのやめよう?」
「…デクくん…焦凍くん…っ…!」
「一緒に強くなろうって約束したし、ね?また一緒に頑張ろう!」
「う…っ…あぁ…あぁああ…ーーー!!!」
デクくんや焦凍くんの言葉に、ついに私は歯止めが聞かなくなって、デクくんにすがりついて声を上げて泣いた。彼らがいなければ、私は間違いなくステインを殺してしまっていた。