第8章 〝仇〟(※裏有)
「邪魔だ…お前も止まれ」
「ぐぅっ…!」
「飯田くん!!」
またも、飯田くんの腕に短刀が刺さる。
「いいから、早く!!」
そう言うと飯田くんは、刺さった短刀を歯の力で無理やり引き抜いた。私も、拳を構える。
自分の体なんてクソくらえ…!これで、仇が討てるなら本望!!戦うんだ!!!
私と飯田くん、デクくんは焦凍くんが作り出した氷の上を駆け抜け、やつの更に頭上に飛んだ。今は、脚が…拳があればいい!!!
ゴッ…!!!
ステインの顔面や体に私たちの蹴りと拳が炸裂した。
「アンタを倒す!今度は、犯罪者として…!!ヒーローとして!!!」
私はステインの脇腹に思い切りかかと落としをお見舞いした。決め手に焦凍くんの氷がステインの体をとらえる。ステインは、動く様子がなかった。
「さすがに…気絶してるっぽい?」
「じゃあ拘束して通りに出よう。氷結だと目覚めた拍子に体割れちまうかもしんねえし…なにか縛れるもんは…」
「念の為、武器は全部外しておこう!」
ーーー何言ってるの?こいつは私の両親を殺したんだよ?そんなやつを生かしておくの?そんなの…
なぜか、私の心の中にドス黒い何かが湧いた。私は、おもむろに足元に落ちていたステインの短刀を拾い上げた。
「四楓院さん…どうしたの?」
「…こんな奴、生かしておく必要なんかないよ…だってこいつは…お父さんとお母さんを殺した…!!死んで罪を償わせてやる…!」
「ダメだよ四楓院さん!そんな事しても、更に君の心が傷つくだけだ!」
そう言うとデクくんは、短刀を拾い上げた私の手を握って制止した。
「離してデクくん…!私は…ずっと探してたのよ!10年…やっと見つけたのよ…!!」
「じゃあ、もし殺したとしてご両親は喜ぶの!?パヒュームロックとエンジェルスターは、四楓院さんの手を血で穢せたくないと思う!四楓院さんがなりたかったヒーローは、憎しみでヴィランを殺す人なの!?パヒュームロックやエンジェルスターは、こんな事をするヒーローじゃなかった!相澤先生だって!!!」
「ーーー!?」
デクくんの言葉に、私はハッと我に返った。そして、短刀を持っていた手の力がゆるみ、ガシャ…と虚しい音を立てて地面に落ちた。やがて雨が降り始め、もう立っていることすら辛くて、私は膝から崩れるようにしゃがみ込んだ。