第8章 〝仇〟(※裏有)
「数秒、意味を考えたよ…一括送信で位置情報だけ送ってきたから。意味無くそういうことする奴じゃないからな、おまえは…」
そう言いながら、轟くんは右の凍結の個性を発動した。
「ピンチだから、応援を呼べってことだろ…大丈夫だ。数分もすりゃプロも現着する!」
轟くんは、動けなくなった私たち3人を氷の個性で後ろへ下がらせ、炎の個性でステインを攻撃した。
「情報通りのナリだな…こいつらは殺させねえぞ、ヒーロー殺し」
「…………」
「轟くん、そいつに血ィ見せちゃダメだ!多分血の経口摂取で相手の自由を奪う!みんなやられた!」
「それで刃物か…俺なら距離保ったまま…」
シュッ!!
「!!!」
焦凍くんの顔のすぐ横を、ナイフが通り過ぎた。
「良い友人を持ったじゃないか…インゲニウム、ブロッサム…」
新たなナイフが、焦凍くんに向けられる。でも間一髪、彼は氷の壁でそれを防いだ。けれど、ステインの動きは止まらない。その僅かな瞬間に、焦凍くんの胸ぐらを掴むと、ステインは気味が悪い程長い舌を伸ばし、焦凍くんへと向けた。
ゴオッ
それも間一髪、なんとか炎の個性を使って吹き飛ばす。
「っぶねえ」
「何故…2人とも…何故だ…やめてくれよ…兄さんの名を継いだんだ…僕がやらなきゃ…そいつは僕が…」
「継いだのか…おかしいな…俺が見たことあるインゲニウムは、そんな顔じゃなかったけどな。おまえん家も裏じゃ色々あるんだな…四楓院も、訳ありって感じだな。」
「己より素早い相手に対し、自ら視界を遮る……愚策だ。」
「そりゃどうかな…!?」
ドドッ…
焦凍くんの左腕に、2本のナイフが刺さった。
「お前も良い…」
頭上から、ステインは長刀を身構えていた。切っ先が焦凍くんに届くギリギリに、デクくんがステインの襟巻きを掴んで引き離した。なんで、動けてるの?
「緑谷!」
「なんか普通に動けるようになった!!」
「時間制限か?」
「いや、それは無いと思う…デクくんは私たちの後にやられてる」
襟巻きを掴まれたステインは、デクくんの脇腹に肘鉄をくらわせた。
「ぐへっ!!」
「下がれ緑谷!」
「ひえ!」
また焦凍くんが氷を発動したけど、ステインは捕まらない。