第8章 〝仇〟(※裏有)
デクくんを見るステインの目は、USJ事件の時のヴィランたちとは明らかに違う、人殺しの目をしていた。それも、背筋が凍てつくような冷たい目…でもそんな事で彼は怯まない。それを知っているからこそ、私は彼に1番来て欲しくなかった。デクくんは、ステインに見えないように背中の後ろで器用にスマホを操作していた。
「やめて!デクくん…!言ったでしょ…!これは私たち個人の問題!あなたには関係ないんだから逃げて!!」
「そんな事言ったら、ヒーローはなにもできないじゃないか!言いたいことは色々あるけど後にする!オールマイトが言ってたんだ…余計なお世話はヒーローの本質なんだって!」
そういうとデクくんは、恐怖と負けん気が入り交じった表情を浮かべて身構えた。
「ハァ…良い」
デクくんが突っ込んだのと同時にステインも走り出した。デクくんの体からは電撃が走る。ワンフォーオールを発動した。彼は無謀にも真正面からステインの懐に突っ込んでいった。けれどそれはフェイントで、ステインの背後に回り込むと…
「ワン・フォー・オール フルカウル…5%デトロイト…SMASH!!!」
頭上からステインを殴り、地面に叩きつけた。その動きはまるで、勝己くんのようだった。けれど、それも虚しく消える。デクくんの様子がおかしい。
「パワーが足りない…俺の動きを見切ったんじゃない。視界から外れ、確実に仕留められるよう画策した…そういう動きだった。口先だけの人間はいくらでもいるが…お前は生かす価値がある…こいつらとは違う…」
そう言うとステインは、私たちに切っ先を向けた。
「ちくしょう!!やめろ!!」
ゴオッ!
デクくんの叫びが虚しく路地裏に響き渡り、私達も死を覚悟した。でもそこへまた新たな力が、ステインの攻撃を防いだ。地面も凍らす冷気…これは…
「…次から次へと…今日はよく邪魔が入る…」
「緑谷…こういうのはもっと詳しく書くべきだ…遅くなっちまっただろ」
「し…焦凍くん…!!」
「なんで君が!?それに、左…!」
「なんでって…それはこっちのセリフだ」
轟くんは、今まで何があっても使わなかった左手…炎の個性を使っていた。