第8章 〝仇〟(※裏有)
「ザ・フライがやられた!おい!どうなってんだ!!何が目的だ、この化け物共は!!」
街に現れたヴィラン…それは感情もなにもない、脳がむき出しになった兵器…雄英を襲撃した脳無だった。脳無の働きっぷりを、高層ビルの屋上から高みの見物をする人物がいた。それはヴィラン連合の死柄木弔と黒霧だった。
「やっぱ…良いね脳無」
「あなたは参戦なさらないので?」
「馬鹿が…怪我してんだよ。だから奴らを持ってきたんだ。ハハハハ…夜が明ければ世間はあんたの事なんか忘れてるぜ…ヒーロー殺し…」
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「「でゃあぁあああ!!!」」
飯田くんは、ステインに蹴りを入れて私は個性でシーバームショットを打ち込んだ。けれど、奴の動きは早くて傷どころか触れることすら出来ない。ショットも蹴りも容易くかわされ、私たちは身を拘束された。
「インゲニウム…兄弟か…それに“ロック”…パヒューム・ロックとエンジェル・スターの娘…インゲニウムは伝聞の為生かした…お前らは…」
「あ゛ぁあああっ!!!」
「きゃああっ……!!!」
「弱いな」
ステインは、足底についていた多数の針で飯田くんの右腕上腕を思い切り踏みつけた。針がくい込み、血が流れて飯田くんは顔を歪めた。私も同様に手の甲を踏みつけられた。肉や皮膚が薄い手からは、針が骨にくい込む音がして、さらにその針は私の手のひらを容易く貫いた。けれどステインは、その足を退けようとしない。
「お前らもお前らの家族も弱い…贋物だからだ」
「黙れ悪党…!!脊髄損傷で下半身麻痺だそうだ……!!もうヒーロー活動はかなわないそうだ!!兄さんは多くの人を救け…導いてきた、立派なヒーローなんだ!!」
「アンタが、家族を潰していい理由なんて…何ひとつありゃしないのよ!!!!」
ーーーえ?ヒーローになりたい?
ーーーうんっ!さくらね、大きくなったらパパやママみたいなカッコイイヒーローになりたい!幼稚園の子たちがね、さくらのパパとママはすごく強くてカッコイイって言ってたの!
ーーーはは、そうか。さくらならきっと、パパやママに負けないくらい強いヒーローになれるさ!
ーーーもしそうなれたら、相澤くんにお願いしないといけないわね!
ーーーそうだな、その時は消太にも話しておくよ
ふと頭をよぎったのは、小さい頃の記憶。