第8章 〝仇〟(※裏有)
ステインに近づいた瞬間、右手に持っていた刃物が後ろへ振り払うかのように向けられた。
「ぐっ…!!!」
それは飯田くんに当たり、ヒーロースーツのヘルメットが飛んだ。さらにはその勢いで激しく地面に叩きつけられ、地面を数回大きく転がって止まった。
「飯田くん、大丈夫!?」
「スーツを着た子ども…何者だ……消えろ。子どもが立ち入っていい領域じゃない。」
「血のように紅い巻物と、全身に携帯した刃物…ヒーロー殺しステインだな!そうだな!?僕たちは、お前を追ってきた!こんなに早く見つかるとはな!!僕は…ーー」
「その目は仇討ちか…」
飯田くんが言い切る前に、私たちの目前に刃物の切っ先が向けられた。それは気色悪いくらいに手入れされ、血の匂いさえする。
「言葉には気を付けろ…場合によっては子どもでも標的になる」
「標的ですら…ないとでも言うの…だったら…聞きなさい!犯罪者!!私は、10年前アンタにやられた夫婦ヒーローの娘よ!彼も、この間ここ保須市でやられたヒーローの弟…!3人とも最高に立派なヒーローだった!!3人に代わって、アンタを止めに来た!!」
私は感情的になり、飯田くんと一緒に立ち上がり、ステインをギッと睨んだ。
「「この名を生涯忘れるな!!インゲニウムとブロッサム・ロック!お前を倒すヒーローの名だ!!」」
「そうか…死ね」
私たちは、戦闘態勢に入った。けれどこの時全く気づいていなかった。私たちがステインに立ち向かっていた頃、保須市ではあの爆発を皮切りに、正体不明の手強いヴィランが多数現れて街は損害を受け、立ち向かったヒーローたちの多くが、ヴィランにやられていた。そして、その場にいないはずのデクくんがいた事も…
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