第8章 〝仇〟(※裏有)
「我々ヒーローに、逮捕や刑罰を行使する権限はない。個性の規制化を進めていった中で個性使用を許されてるわけだから、ヒーロー活動が私刑となってはいけない。もしそう捉えられれば、それはとても重い罪となる。あ、いや!ヒーロー殺しに罪がないとかじゃなくてね、君たち真面目そうだからさ!視野がガーッとなっちゃいそうで、案じた!」
「マニュアルさん、ご忠告ありがとうございます」
ーーーじゃあ…私たちのこの気持ちは、どうしたらいいの?
私たちは…何も出来ないの…?すぐそこにいるかもしれないのに!そう思ったとき、ピロンとiPhoneが鳴った。送信相手はデクくんだった。
『保須通るよ!!四楓院さんと飯田くん、そっちはどんな感じ?』
デクくんが保須に?でも彼が行ってる事務所はもう少し遠かったはず…でもごめん、今は返せない…私は既読したままデクくんのLINEに返事を返さなかった。iPhoneをポケットに閉まったその時。
どぉおおん!!!
突然街の中心で爆発が起きた。近くにいたマニュアルさんは、目の色を変えた。
「天哉くん!ブロッサム!現場に行く!走るよ!!!」
「あ、はい!」
私はマニュアルさんの後を追いかけるように走り出したけど、なぜか飯田くんが着いてこない。足を止めて振り向くとら飯田くんは一点を見つめて動こうとしなかった。
「飯田くん、どうしたの?早く現場に…」
「四楓院くん…あの建物の間…なにか見えないか?」
飯田くんに促されてそちらを見ると、そこには人影が2つ。それは、顔面を鷲掴みにされて壁に追いやられた地元ヒーローと、ヴィラン。そいつはこちらに目を変えた。
「「ーーー!!!」」
その目には包帯が巻かれ、その手には刃物。さらに腰や背中にも刃物を所持していた。間違いない、あいつは…
「ステイン…ーー!!!」
「騒々しい…阿呆が出たか…?後で始末してやる…今は…俺が為すべきことを為す。」
「身体が…動かね…クソ野郎が…!!死ね…!」
囚われたヒーローは、顔面を潰されながらもそう吐き捨てた。けれど、ステインには全くの無意味…それどころか、ヤツの感情を昂らせてしまった。
「ヒーローを名乗るなら、死際の台詞は選べ」
「飯田くん!!!」
「わかっている!」
私たちはマニュアルさんを追わず、2人でステインの元へ向かった。