第8章 〝仇〟(※裏有)
体育祭の疲れも癒え、次の日。雨が降りしきる中、私は電車に乗って学校に向かっていた。体育祭が全国放送されてからというもの、ゆく先々で色んな人に声をかけられた。なかには「ヒーローよりモデルの方が向いてるんじゃ…」と話す人もいたけれど、私が見る未来は、ヒーローしかない。でも、明るいことばかりじゃない。今日の空みたいにぐずついたり、辛いこともいっぱいあると思う。それでも私は、前を向いて歩くしかない。
「何呑気に歩いているんだ!!遅刻だぞ!おはよう四楓院くん!!」
「か、カッパに長靴!?それに遅刻って、まだ予鈴5分前だよ?」
「雄英生たるもの10分前行動が基本だろう!」
飯田くん…いつもと変わらないように見えた。でも、どこか心配させまいと、空元気なようにも見えた。体育祭のときデクくんから聞いた、お兄さんがヴィランに襲われた話…まさか、容態が良くないのかな…
「…あ、飯田くん…」
「兄の件なら心配ご無用だ!」
「え?」
「要らぬ心労をかけてすまなかったな」
そう言って、飯田くんは早々とその場を去ってしまった。私も傘を畳むと上靴に履き替えて教室へと向かった。
「おはよう!」
「おー!さくら、おはよう!」
教室には既にクラスメイト全員が来ていて、話題は体育祭で持ち切りだった。
「超声かけられたよ来る途中!」
「私もジロジロ見られて恥ずかしかった!」
「俺も!」
「俺なんか小学生にどんまいコールだぜ」
「どんまい、瀬呂ちゃん」
「私なんてヒーローよりモデルの方が向いてるんじゃないかとか言われたよ?」
「「「あー」」」
みんなが口を揃えて同感してきたけど、なんか複雑な気持ちだった。
「でも、たった1日で一気に注目の的になっちまったよ…」
「やっぱ雄英すげえな…」
キーンコーンカーン…
予鈴が鳴り、みんなが一斉に席に着いた。それから程なくして教室のドアが開いて。
「おはよう」
『おはようございます!』
いつもと何ら変わりない消ちゃんが入ってきた。ふと目が合ってしまい、私の顔に熱が集中して、一気に熱くなってしまった。
ーーふ、普通にできない…!!
どうしても、あの夜のことを思い出してしまう。
「ケロ…相澤先生、包帯取れたのね…よかったわ」