第7章 熾烈を極めし、雄英体育祭
(さくらside)
“…さくら…お前は、まだ負けちゃいねえ…”
“待ってろ…俺が勝ってきてやっから”
「負けるなー!!勝って!!!!かっちゃーーーん!!!!!!」
気づいたらそう叫んでた。勝己くんに負けた時、彼が私に掛けてくれた言葉に賭けたかったのかもしれない。勝己くんが勝てば、私は彼の女になる…でも、それでも私は彼に賭けても消ちゃんを妖崎さんに取られたくなかった…その気持ちが私の体と口を動かしたのかもしれない。優勝が決まった瞬間、私の目からとめどなく涙が溢れた。こっちを向いた勝己くんは「『仇を取った』と言いたげな目をしていた。でも彼の腕からは滴り落ちる血は、怪我のひどさを物語っていた。きっと毒も回っていて立っているのがやっとなはずなのに。
「あ、爆豪ちゃん戻っていったわ。表彰式の前にリカバリーガールのところへ行くのかしら」
「だろうな、あの蛇の牙痛そうだったし、毒が回るまえに毒抜きしねえとやばいしな」
リカバリーガールのところか…勝己くんが戻らないと表彰式は出来ないだろうし、様子見に行こう。
「鋭児郎、私ちょっと席外すね」
「おう、分かった!」
私は鋭児郎にひと声かけると席を立ってリカバリーガールのところへ向かった。
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「まったく…命に関わるような試合をした選手は退場じゃなかったのかい!?毒なんて、心臓に達したらあっという間にあの世行きさね!なんで止めなかったんだいミッドナイトは!」
リカバリーガール出張所の前に来ると、そうプンスカと怒るリカバリーガールの声が聞こえた。勝己くんが怒られてるみたいじゃなくてよかった。私は勝己くんが部屋から出てくるまで待つことにした。
あんな勝己くん、初めて見た。最初は誰彼構わず死ねとか殺すとか言っていたのに、今日の彼は自分の信念と私の為に戦ってくれていたように見えた。対人戦闘訓練から、彼は変わり始めてきている。相変わらず人に興味は無さげだし、死ねとか殺すとか言うけど…でも…
ガチャ…
「ーー!?」
「!」
部屋の扉が開いて、勝己くんが出てきて私は驚くことしかできなかった。勝己くんもまさか私がいるとは思わなかったのか、三白眼が大きく見開かれた。
「あ、あの…」
「………」
勝己くんは何も言わないまま私を見下ろしている。