第7章 熾烈を極めし、雄英体育祭
「…完敗だ」
控え室。そこには、激しい試合を終えたさくらが、1人ぽつんと椅子に座っていた。爆豪から受けた傷や火傷は、リカバリーガールの治癒のおかげでほとんど治った。しかし、彼女の心の引っ掛かりが取れることは無かった。妖崎と戦う前に負けてしまい、賭けは妖崎の不戦勝となってしまった。「勝己くんが勝ってくれたら」と、この場に及んでも人に頼ってしまう自分に嫌気がさして思わず机を思い切り拳で殴る。
「なんで…私はいつも肝心な時こうなの…!」
唇を噛み締めて、涙をこらえる。その時。
コンコンコン…
「四楓院さん」
「デクくん…」
やってきたのは、緑谷だった。
「もー、負けちゃったよ!やっぱ勝己くんは凄いや!」
「怪我は、大丈夫?」
「リカバリーされた!まだ擦り傷とかは残ってるけど…」
「…大丈夫?」
「え、ケガならさっき…」
「じゃなくて、その…」
緑谷は少し戸惑いながらも、さらに少しさくらとの距離を縮める。
「四楓院さん、泣いてるよ…?」
「え…?」
言われて気づいた。頬を触れると、確かに目からは収まりきらなかった涙がとめどなく溢れていた。
「なにこれ、どうなって…!私は、大丈夫なのに…!」
さくらはゴシゴシと涙を拭う。そんな姿を見た緑谷は、胸を痛めた…きっと彼女にも譲れない気持ちや信念があったはずだ。けれど、自分の無力さゆえにそれは砕かれ、今自分の気持ちと戦っている。でも、強いイコール泣かないは、違うのだ。緑谷は、ふわりと優しくさくらを抱き寄せた。
「…!デクくん…!?」
「四楓院さん…負けたからと言って、道が閉ざされたわけじゃないよ…まだ来年も、再来年もある。チャンスはまだあるんだから、そんなに自分を責めないであげて…」
「ダメなの…今年じゃなきゃ…意味ないの…今年じゃなきゃ…!!!」
「……そんなに急がなくても大丈夫だよ…妖崎さんに、相澤先生の賭け事かなにかされたんだよね」
「ーーっ!どうして、それを…」
「え!本当だったの!?!?……仮にそれが本当だとしても…大丈夫だよ。妖崎さんが優勝しても、相澤先生は、あの人を選ばないと思う。」
「…そんなの分からないよ」
「分かるよ!」