第7章 熾烈を極めし、雄英体育祭
まるで安心させるかのように、さくらを抱き寄せる緑谷の腕の力が強まる。
「君は、誰よりも『魅力的』な女の子だよ。それは、ずっとそばで見てきた相澤先生がいちばんよく知ってると思うんだ。誰よりも優しくて、仲間思いで、人の為に涙を流せる素敵な人だ…大丈夫だよ」
「……ーーーっ!デクくん……!」
「あと、泣かないと強さは関係ないよ…泣かないイコール強さじゃない…人は泣いて苦しんで…たくさんの人に助けられて強くなるんだ…悔しいと思うけど、四楓院さんは強かったよ。お疲れ様」
「…うっ…ひっく…ひっく…」
緑谷はさくらの背中を優しく撫でた。
「四楓院さん…僕は…」
「…?」
「あ、いや…その…」
緑谷が何かを言いかけた。次に紡がれる言葉に耳を傾けていると…
『あーーーおぉ!!今切島と鉄哲の進出結果が!!』
マイクの実況が響き渡った。
「あ、そうだ!鋭児郎…!」
『引き分けの末、切符を勝ち取ったのは切島!!!』
「やったーっ!鋭児郎!!!」
こうして、第2回戦が始まり、勝ち進んだ生徒たちが力の限り戦った。勝敗が決まって人数は削れ、ついにガチンコバトルは第3回戦へ。A組から勝ち進んだのは轟、爆豪、常闇。そしてB組妖崎の4人だ。3回戦第1試合は飯田対轟だった。激しい戦いと、ボルテージが上がる体育祭会場。
しかしそれとほぼ同時刻ーーー会場から離れた東京、保須市で“ある事件”が勃発していた。
『ヒーロー殺し』
明るい世界の裏で蠢く影にこの時、まだ誰も気づいていなかった。
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