第7章 熾烈を極めし、雄英体育祭
ーーー絶対…負けるもんか!
私は手のひらから皮脂を出し、それを胸ぐらをつかんでいた勝己くんの手に塗るように触れた。
「なっ…てめぇ…!」
皮脂で手が滑ったのか、勝己くんは思うように投げ飛ばせなかったのか、私は着地したのと同時に指を地面にくい込ませるかのように力を込めて、なんとか場外は免れた。でも、戦況は変わらない…もう、猪突猛進に行くしかない!
『四楓院、間髪入れず再突進!』
「おっせえ!!!」
「でやぁああ!!」
私は蹴りをお見舞した。勝己くんは腕でガードしたけど、さらにもう片方の足で脇腹に蹴りを1発入れる。
「ぐっ…!」
勝己くんの表情が歪んだ!今なら!
「ふざけんじゃねえぞ!ひ弱女!!!」
「もう、ひ弱じゃない!!私は…!うっ…!!」
その時、突然激しい吐き気が込み上げ、そして…
「おぇ…えっ…」
大量の嘔吐をした。そして激しい動悸と息苦しさ…リバウンド…!?違う、これは…!
「発作…!こんな…時に…!!」
『おーっと!四楓院、倒れ込んだ!一体どうし…』
『試合中止!あれは発作だ!救護班急げ!』
放送が鳴るなか、勝己くんはその手を止めようとしない。そう、彼ならそうなるよね。私だって…!
「だめ…!私は決めた…!自分にも勝つって…!!」
私は口元を拭うとギッと実況解説の方を睨んだ。
「私は大丈夫です…相澤先生…!試合を…続けさせてください…!」
しかし、それとは別に違う声が会場中に響き渡る。
「おい!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放り出せよ!!」
それは、観戦しに来ていた、1人の男のヒーローだった。
「女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!!」
「そーだそーだ!」
それを境に会場中から勝己くんに向けて激しいブーイングの嵐が巻き起こった。
『爆豪に向けて一部からブーイングが!しかし正直俺もそう思…わあ肘っ!なにSOON…』
『今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?シラフで言ってんなら、もう見る意味ねえから帰れ…帰って、転職サイトでも見てろ。』
「消…ちゃん?」
『爆豪は、ここまで上がってきた相手の力を認めてるから、警戒してんだろう。本気で勝とうとしているからこそ、手加減も油断もできねえんだろうが。』
消ちゃんの言葉にブーイングが止まり、会場は静まり返った。