第2章 波乱の初日
「緑谷くんは、このままだとマズイぞ...」
飯田くんが腕を組みながら神妙な面持ちで話す。
「あ?ったりめぇだろ...無個性のザコだぞ」
「え...緑谷くんて無個性なの?爆豪くん、緑谷くんが入試試験の時にしたこと、知らないの?」
私は思わず爆豪くんに聞き返してしまった。彼は、無個性なんかじゃない...無個性ならあんなロボを殴り飛ばせるような力出せるわけがない...確かに殴り飛ばした腕は大怪我をして鬱血もしていたけど、それを差し引いても、彼が無個性とは言えない。
緑谷くんは意を決してボールを投げた。その瞬間、覇気のような気配が辺りを漂い、緑谷くんが投げたボールは46メートルという記録だった。そう、その気配の意味を私は知っている。
「え...なんで...今確かに使おうと...!!」
「個性を消した...」
「「「!!!」」」
緑谷くんが見たもの、それは個性を発揮した消ちゃん...プロヒーロー・イレイザーヘッドの姿。首に巻いた布は炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器を外して靡かせ、肩まである黒髪は逆立ち、鮮血を思わせる赤い目は相手に恐怖すら与える。
「つくづくあの入試は...合理性に欠くよ。お前のようなやつも入学できてしまう...」
「...個性を...消した?.....!そのゴーグル...そうか!視ただけで人の個性を抹消する個性...抹消ヒーロー・イレイザーヘッド!!」
「イレイザー...?おれ知らない」
そう、消ちゃんはメディアが嫌いだからテレビとかの取材は受けない。だから彼の存在を知っているのは極々わずか。緑谷くんが知っていたのには驚いたけれど、梅雨ちゃんも知っているようだった。
「聞いたことあるわ...アングラ系ヒーローよ」
消ちゃんは、ズボンのポケットに手を突っ込み、まるで睨むかのような目付きで緑谷くんを見る。
「見たとこ...個性が制御できないんだろ」
「ーーー!」
「また行動不能になって、また誰かに助けてもらうつもりだったか?」
「そ...そんなつもりは.......!!」
緑谷くんの言葉を聞く前に消ちゃんは、捕縛武器を使って彼を引き寄せた。イレイザーヘッドの姿の彼もかっこいいけど、相変わらず個性を発揮するとほんと怖い...