第6章 “想い”と“ライバル”※微裏注意
消ちゃんの目は、まるでおもちゃを横取りされた子どものような目をしていた。気に入らないと言わんばかりに証が付けられた首筋に手を触れた。
「ーーーっ…」
くすぐったくて、思わず体が小さく跳ねてしまった。
「こんな小さなもんで、手に入れたつもりか…」
「え…っ…?」
そう、囁くように言った消ちゃんは私の首筋に顔を寄せてきた。
「ち…ちょっと…消ちゃん…!包帯がまだ…」
「ンなもんあとでいい」
「…っ…!」
首筋にヒヤリと冷たいものが触れた。そこは、勝己くんに証を付けられた場所…。消ちゃんはまるでその上から重ねづけるように、唇を寄せてきた。耳元にかかる息が心臓を煽らせる。さらに囁くように言葉を紡ぐ消ちゃんの声は、大人の男性特有の色気が溢れていて、私の心臓はどうにかなりそうだった。でも、なぜ…これは恋人同士がするものであって、私たちはそんな関係じゃないのに…消ちゃんはどんな気持ちでこんな事をしてくるのか。
「…っ」
首筋にピリッと痛みが走った。勝己くんに付けられた証が跡形もなく消えたのは、今の感覚で見なくてもわかった。首筋から感じた吸われる感覚…首筋にさらに大きなアザが出来た。
「…変なヤツに捕まるなよ」
またも私の耳元で囁くように言った消ちゃんは、何事もなかったかのようにホールドしていた私の手を離してソファに座り直した。逆に私は何が起こったのか、まだ理解出来ていなくて呆然としていた。まさか消ちゃんがこんなことするなんて思わなかったから尚更だ。言いたいことが山ほどあるのに、テンパってしまって口がワナワナとしか動かない。
「ししし、消ちゃ…!?」
「ん?なんだ?」
消ちゃんは薄笑いを浮かべていた。まるでイタズラをした子どものように…勝己くんとはまた違う、してやったりという顔だ。
「不満か?」
「そうじゃない…っ!!ななな…なにを…!?!?こ、これはあの…私と消ちゃんみたいな関係の人がやることじゃなくて…その…!」
私は証をつけられた所を触りながら消ちゃんに言葉を投げかける。
「こ…これは、こういうのはその…恋人同士がすることっていうか…私と消ちゃんはそんな関係じゃないっていうか…」