第6章 “想い”と“ライバル”※微裏注意
けれど、勝己くんの言葉に、不思議とみんなが共感した。
「…シンプルで男らしいじゃねえか爆豪…!!」
「言うねえ…」
「上か…一理ある」
「いやいや騙されんな!無駄に敵増やしただけだぞ!?」
「そうだそうだ!体育祭、オイラたちが不利になるだけじゃんか!」
上鳴くんと峰田くんは逆みたいだけど、でも、私も共感はできる。あの日…対人戦闘訓練でデクくんに負けた勝己くんが、涙ながらに見せた覚悟を私は思い出していた。そして、私が彼にかけた言葉も。そして、ヴィラン襲撃前食堂で勝己くんが私にかけてくれた言葉も…。
「勝己くん、待って!」
私は思わず教室から飛び出した。
「うお!?あれ、噂の美少女じゃねえの!?」
「ほんとだ!写真に載ってた!」
そんな言葉が耳に入ってきたけど、私は構わず勝己くんを追いかけた。
***************************
生徒用玄関をすぎた頃、私はようやく勝己くんに追いついた。
「勝己くん!待って…!」
「?」
「はぁ…はぁ…か…きくん…!」
その頃には息が上がり、上手く言葉が話せない。膝の上に手を置き、呼吸を整える。その間勝己くんは、私が落ち着くまでずっと待っていてくれた。
「勝己くんに…お願いがあるの…」
「あ?」
「再来週の体育祭まで、勝己くんと一緒にトレーニングさせて欲しいの」
「断る」…その言葉を覚悟していた。1番になりたがりの勝己くんの事だもん…わざわざライバルを増やすようなことをしないかもしれない。でも、私はこの体育祭…何がなんでも絶対負けられないの…。この思いは、誰にも負けないし譲れない!
「分かった」
「え!?」
「ただし、条件がある」
勝己くんはそう言うと、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま私に向けてゆっくりと歩み寄ってきた。その後に紡がれた言葉は、思いがけないものだった。
「俺が体育祭で1位になったら…」
そしてその距離はついに無くなり、私は勝己くんを見上げる。逆に私を見下げる勝己くんの赤い目は、確かに私を捉えていた。それも、いつもの人を見下すような目じゃなくて…
「俺が1位になったら……俺の女になれ、さくら」
「え……!」
私は何度も自分の耳を疑った。あの勝己くんからそんな言葉を聞くなんて、夢にも思わなくて。でも、「はい」とは言えない。