第5章 過去の亡霊 R18
不意に距離をつめても
男は微動だにせず、簪が刺さる鈍い
感触が絢迦の手に伝わる
『あっ…(避けない?)』
その姿はまるで遠くから見ると
男の胸に抱かれている様にも見える
「愚かな…こんな物で私を殺せると?」
至近距離で顔を掴まれ上をむかされ
お互いの瞳がぶつかりあう
『っ……!?』
「お前は…!?」
違う意味でお互い驚いている
『(普通の人間にしか見えない
こんなに血の香りが酷いのに!!)』
絢迦は男の風貌に
「(バカな…あいつが生きていたのは
もう何百年も前のはず」
男は絢迦の顔をみて何かを
考えこんでいる