第3章 捕らわれたイヤミ
その時、一台のハーレーが横に止まった。○○がハンドルを握っている。
「乗りな!」
ニッと笑って跨がる。
「しっかり掴まってな!」
○○の腰をしっかり抱く。
「飛ばすぜ!!」
爆音を轟かせ、ハーレーが風を切る。カラ松はこの時初めて、『ハンドルを握ると人が変わる』という言葉の意味を、理解した。それほどまでに、○○の人格は変貌していた。
「おらおらおら!!どきやがれぇ!!」
あっという間にみんなに追い付く。
「ちんたら走ってんじゃねぇぞ、おらぁ!」
バゥウウウウン!!
ハーレーが宙を舞う。
ドンッ!!
見事な着地。
「マジかよ…。ハーレーだぞ、ハーレー!!」
「2代目、かっこいいですぜ!」
「いいなぁ、カラ松兄さん」
「乗りたかった…」
いつの間にかハーレーを先頭に赤塚ビルの建設現場へと向かう。
たどり着くとチビ太とその傘下たち、そして椅子にくくりつけられたイヤミがいた。ぐったりとうなだれ、殴られたらしく血が出ていた。
「金は、持ってきたんだろうな?」
「1000万なんて、お金ないよ」
「なにぃ?!てやんでぇ、ばーろー、ちきしょー!!」
「力ずくで返してもらうよ!私のたった一人の父親だから!」
「てめえら、やっちまえ!!」
「みんな、死ぬんじゃないよ!」
「「おおーーーーーーっ!!」」
○○が地を蹴った。下っぱの攻撃を華麗にかわし、とある箇所を攻撃して動きを止める。
「ヒュー!かっこいい!」
「感心してないで、攻撃しろ!」
○○はチビ太の前にいた。
「うう…。つ、強い…」
「おじさん…お父さんを返して!」
その時、○○に激痛が走った。
「がぁっ!!」
今までぐったりしていたはずのイヤミが、椅子から立ち上がっている。
「やっぱり金には、ならないザンスね。こんなことなら、さっさと殺せばよかったザンス」
「イヤミ。お前が育てたんだろ?いいのか?」
チビ太の問いにイヤミは、つばを地に吐いた。
「ケッ!金持ちを暗殺させて、お金を巻き上げるつもりだったザンスが、こんな役立たずだとは、思わなかったザンス」
ドスッ!!
○○のナイフが、イヤミの喉に突き刺さった。
「がはっ!!」
「ひ、ひぃいいい!!い、命だけは助けてくれ!」