第13章 Blow! 〈朝日奈 乃愛〉
『あ、ありがと…』
「取り敢えず迎えなら来てくれるだろう」
何の事を言ってるのか分からないけど、もう、今は何も考えられない…。
「大丈夫だ。彼奴はもういない」
『うん…』
「もしもし父さん…今から言う所に車で迎えに来てくれませんか?…はい、頼みます」
取り敢えず、忘れたかったからさっきの事は考えない様にした。楽しい事を見つけようと思うたびにさっきの現実を思い出してしまう。
「父さんが迎えに来てくれたから、行こう」
『ごめんね…私…』
「お前が謝る必要はない。掴まってくれ。歩けるか?」
『うん…大丈夫…』
外に向かうと長細い高級車が待機していた。
「修也、その子はなんだ」
『私、朝日奈 乃愛です…。豪炎寺君のクラスメイトです…』
「そうか。足を怪我しているな。取り敢えず、家に帰るぞ」
「はい」
車の中は無言だった。豪炎寺も、何も喋らないなんて…そんなに怖い人なのかな。
「行くぞ」
『はい』
こ、怖い…。嫌でも事件を忘れそう…。雰囲気が怖すぎる。
「あ、お姉ちゃん!今日も来てくれたの?」
「今日も?」
『あ、えと、日曜日に夕香ちゃんと遊んだので…』
「そうか。部屋へ来い。治療してやる」
『は、はい』
豪炎寺のお父さんの部屋は書斎のような部屋だった。部屋まで雰囲気とそっくりだなんて。
「軽い捻挫だ。湿布とテーピングをしておいたから、これで問題ないだろう」
『あ、ありがとうございます』
「修也、お前は一度出て行け」
「はい」
こ、怖い…。な、何言われるの?うちの息子に何してくれてんだとか言われないよね…?
「朝日奈 乃愛さん、だったな」
『は、はい…』
「修也を、頼む」
『え?』
「あの子は未だ私に警戒心を抱いている。貴方が心の支えになってくれ」
『は、はい…』
「話は以上だ。修也!話があったんじゃないのか」
「はい。これから、朝日奈をここに泊めてあげて下さい」
「…良いだろう。話は以上だな」
「はい。朝日奈、行くぞ」
『う、うん…』
豪炎寺に手を引かれて豪炎寺の部屋にやってきた。
「忘れかけている所悪いが、何があったのか話してくれないか」
『うん…。帰って自分の部屋開けたら彼奴がいて、彼奴…私の下着を…。それで押し倒されて、キス…された…』
「…」
『ごめん、今日は寝るよ。明日は学校、休む』
「ああ、それがいい」
『それじゃ』