第13章 Blow! 〈朝日奈 乃愛〉
「知ってる奴か?」
家の前に立っていたのは、私が両親に並び最も嫌いな人の中のトップ3。私の、元婚約者。私が必死に両親を説得して婚約を破棄してもらった。
『一応』
「おや、帰ってきたね」
その憎たらしい顔はもう二度と見たくなかった。どうして、あなたが此処にいるの?暫く何もしてこなかったと思ったらこれなんて、最悪にも程がある。
『もう、来ないで下さいって言いましたよね』
「それは無理な要望だと言ったはずだよ」
『これ以上、此処に来るなら訴えます』
「無駄だよ。君の両親に掻き消されて終わりさ。それに、そんな奴と色恋沙汰でも楽しんでいるのかい?言ったはずだ。大切のなのは利益だと」
『私は利益を求めていません』
「そうだ。君はこれからアメリカに帰ってもらう」
『…帰りません。アメリカには。絶対に』
「そうか。それならこの家を売るまでだよ」
『最っ低!』
まさか、ここまで準備してたなんて。もう、居場所が無くなってしまう。嫌だ、折角高校で好きな人が出来たのに…!こんな人達に壊されたくない!
『とにかく、私は帰りません。両親にはそう伝えておいて下さい』
「…君は黙って君の両親に従えば良いのに」
そう吐き捨ててあの人は去って行った。もう、最悪。二度と見たくないのに。また攻防戦が始まるの…?
「彼奴は…」
『あたしの、元婚約者。名前は榊 真也。中学生の時からあたしの事付け回してる変態。ここの所何もして来ないから安心してたのに、こんな大きな事になるなんて…』
「大丈夫なのか?」
『分かんない。追い返すしかないよ』
「気を付けろ。何かあったら俺を呼べ」
『うん。ありがと、それじゃ』
豪炎寺に手を振って家の中に入った。一応念の為ドアガードかけとかないと。深夜とかに入って来られても困るし。防犯系強くしときたいな。まじで怖いんだけど。ストーカーって言って訴えたい所だけど、お父さんやお母さんに揉み消されてしまう。もう、どうしろって言う訳…?
ーー翌日
『おはよ、豪炎寺』
「大丈夫か?随分と元気が無いみたいだが」
『何とかね…。中学生の時のが繰り返されるかと思うと吐きたくなるんだけど』
「何が…あったんだ」
『中学の時は登校から下校まで完全にストーキング。中学の教師になってしつこく付きまとってくるし』
「凄い執念だな」
『彼奴は変態なの。所謂ロリコンって奴?』