第9章 Rise! 〈綾織 星羅〉
鬼道君と病院に向かって、急いでお父さんとお母さんの元へ向かった。
『お父さん!お母さん!』
既に霊安室に横たえられたお父さんとお母さん。冷たく暗い空気が立ち込めている。もう、一言も話してくれない。何も、聞こえない…。
『どうして…置いていくの』
医者に説明を受けたけど、あまり頭に入ってこない。全て時が止まったように感じた。もう、これ以上此処に居たくなかった。現実を突きつけられたような気がして。
「綾織…!」
『私は…大丈夫…だから…』
「大丈夫じゃないだろ!泣いて良い、泣いて良いから…」
鬼道君は優しいから私に鳴き場所をくれるんだ。きっとそうだ。だってそうじゃなきゃボロボロな私を…泣かせてくれないでしょう?みっともない位に泣きじゃくって、一生分の涙を流したんじゃないかって程に私は壊れかけていた。
そのあとはどうしていたか覚えていなかった。鬼道君に連れられて鬼道君のお家に帰ってきたのは覚えてる。それ以降は時が止まっていた。食事もまともに喉を通らなかった。部屋に籠ってどれくらい経ったか分からない時、ノック音が聞こえた。
「星羅…?」
乃愛ちゃんの声だった。少なからず分かっていた、乃愛ちゃんや星羅ちゃんに被害が出ているっていうのは。私は二人に合わせる顔がないよ。
「顔を上げて、星羅」
無理だよ。どんな顔して向き合えば良いの…?
「上げて」
恐る恐る顔を上げた。乃愛ちゃんは、何を考えているの?
「今から私は星羅に凄い辛い事言う。その言葉に怒ったって構わない。でも、私は星羅に聞いて欲しいから言う。だから聞いて」
『…』
やっぱり私の所為って言いたいの?
「私達は星羅の流れ弾が当たったってどうだって良い。だって私達はそれを承知で側にいる。親友としてずっとやってきた。もしその事に罪悪感を感じてるなら今すぐ捨て去って!」
私を許してくれるの…?私の所為でこんな大変な事になってるのに。
「お父さんとお母さんが亡くなって泣きたいし、辛いのも知ってる。星羅程強く感じる事は出来ないのも、分かってる。でも、ここでメソメソ泣いて、何が変わる?あんたがやる事は、相手が間違ってる事を伝える事!此処で時が流れるのを待つ事じゃない!」
確かにそうだ。このままじゃ、相手の思うツボの筈だ。私は、堂々としていなきゃいけないんだ。このままじゃ永遠に時間が止まったままだ。