第8章 Throw! 〈朝日奈 乃愛〉
ーー星羅の両親が、亡くなったーー
突如届いた最悪な情報。信じられなかった。バンドメンバーが二人集まった日、明るく振舞ってはいたけれど、本当に信じられなかった。まさか、こんな目に合うなんて。豪炎寺も時折心配そうな顔をしていた。うちのお父さんとお母さんはアメリカで仕事中だけど…。何もないと良いな…。あれ、携帯なってる…。
「朝日奈!さっきヒロトから連絡が入って…!」
『どうしたの、豪炎寺…!』
「綾織を狙っていた理由が分かった!」
『え…?』
「復讐…だそうだ。今日、天晶が相手側と接触した時に聞いたらしい」
『え…瑠璃が?』
「明日の朝、送って行く。次はお前の可能性が高い」
私が…。私達三人に何があるの…?星羅…?大丈夫なの?私が狙われる…。そしたら豪炎寺は?夕香ちゃんは?夕香ちゃんにまで被害が行ったら私は…。きっとこれから一生自分を許せなくなる。
『だ、大丈夫だよ。私は大丈夫だから…。それじゃ…』
「おい!」
強引に電話を切った。星羅の流れ弾が私に当たっても私はどうって事ない。でも、それが豪炎寺や夕香ちゃんに行くのは、辛い。それに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。ご飯を食べる気にもなれなくて、お風呂に入って寝ることにした。もう、何も考えたくなかったから。
ーー翌日
何故だか早く目が覚めて、時計を見たらまだ五時半だった。まぁいいや、準備しようと思ってベッドから這い出た。朝食も本当は食べたくなかったけど、冷蔵庫にあったフルーツを二、三個食べて制服に着替えた。
『学校行きたくない…』
こんな状態で、外に出たくないし正常でいられる自信がない。でも、後で単位取れなくて困るのは私だから。嫌々ローファーを履いて歩き出した。どんよりした気分で歩いているといきなりガラガラと変な音がする。横を見ると家の塀が私に向かって崩れてきた。
『あ…!』
「朝日奈!」
手を引いて抱き寄せられた。恐る恐る目を開けると、豪炎寺が腕を掴んでいた。なんで…いるの…?
『あ…あ…』
「間一髪だったな」
『ど…して?』
「だから送って行くって言っただろ」
『でも…そしたら…』
「俺や夕香は大丈夫だ。あいつらは俺を襲ってこない」
『そんなの分かんないよ』
離れようとするけど、男の子の力はやっぱり強くて振り切れなかった。
『離して…』
「だめだ。またお前何かあったら…」