第7章 Wake! 〈天晶 瑠璃〉
『私達の為にここまでしてくれるなんて』
「鬼道君は多分、綾織さんが好きだ」
『それは何となく分かる。目を見れば』
「そして豪炎寺君も、語りはしないけど、多分…」
『乃愛ちゃんが好きって事でしょ?』
「ああ」
『でも、君は目を見ても何も分からない。分かるのは…本当は脆いって事』
「…!」
『何かを隠してる。そうでしょ?』
ヒロト君は俯いた。でも、君は脆いけど、とっても優しい。私は、知ってるよ。
『でもね、君はとっても優しい。そういう所は好き』
ふふ、ワンコみたい。一つ一つの言葉に一喜一憂する。君は案外単純だ。複雑のようで、核は単純。
『帰ろうか。ヒロト君』
「ああ」
『君の事、ちょっと分かってきた』
「君は…鋭いね」
『目を見れば分かるよ。君は良く分かんないんだけど。でも、話せば分かる』
「それじゃあ、これからは沢山話しかけに行こうかな」
『良いよ。君の事、分かりたいし』
だんだん分かるようになってきた、君の事。私は多分、もう…。だけど、これは私の意地。ちゃんと分かるまでは、生半可な気持ちで付き合いたくない。
『ヒロト君達には被害がないんだね』
「僕達はこういうのを経験したことがあるんだ。と言っても僕はやる側だったんだけど」
『エイリア学園時代って事?』
「うん。だから僕達に被害が無いんだと思う」
『経験済みって事だからか…。じゃあ、ヒロト君が守ってくれて正解だったかも』
「他の二人も多分経験済みだ。だから僕達には被害が来ない」
『偶然だったけど、良かった…』
お家に明かりが付いている。やっと帰ってきた感覚がある。何だか今日は波乱の一日だった…。
『送ってくれて有難う。助かった』
「気にしなくて良いよ。僕が好きでやってることだから」
『ううん。ヒロト君が居なかったら、私、きっと…。だから、有難う』
家に入る直前、そのまま家に入ると見せかけて振り返って、頬にキスをした。これは、ご褒美。
「ちょ、」
『また明日の朝、待ってるから』
「え、あ」
微笑んで、家の中に入った。妹や弟達の声がする。良かった…。他の子は無事…。
『ただいま〜』
「お姉ちゃん…」
『紫と琥珀なら大丈夫。すぐに治るみたい』
「それなら良いけど…」
「お姉ちゃん…ごめん!守るって約束したのに…」
『良いの。今回はまだ軽い怪我で済んだ。次は、どうなるかわからない。気を付けて』