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Break! 【イナズマイレブン】

第57章 Enamour!〈綾織 星羅〉


若干涙目になりながら感謝を伝えられた。感謝を伝えるのはこちら側なのに。この姿を見ると、まるで女神の様だと思ってしまう。

『大丈夫だ、星羅。俺がいる』
「うんっ…」

これが所謂いきんでいる、という事なのだろう。必死に手すりを握りしめて力んでいる。何か少しでも出来ることがあるのなら。

『星羅。頑張れ』
「がん…ばるっ…!はぁっ…はぁっ…」

多分、ほぼ意識が曖昧になっているんだろう。確かに、こんな状態を長く繰り返しているのなら疲れてしまうのも無理はない。

『星羅っ…』
「ううっ…はっ…あうぅ…あっ…」
「はい、お疲れ様でした〜!」

最後のいきみと共に愛しい我が子が生まれてきた。星羅もぐったりしていて、肩で息をしている。

『良く頑張ったな。星羅』
「うんっ…」
「元気な女の子ですよ」

何故だか自分の妻と子が初めて触れ合った場面がこんなにも神秘的だったのかと思ってしまう。思わず涙が溢れてしまうほど。

「どうして有人君が泣いてるの〜!ほら、この子も泣かないでって言ってるよ」
『ああ…そうだな』

とても可愛い子だ。きっとこれからどんどん成長していってしまうのだろう。

「ふふっ…嬉しいなぁ…。大好きな有人君との子供だよ?こんなに可愛いんだねぇ〜」

出産後にも関わらず、疲れを見せないその笑顔がとても眩しかった。

『星羅にそっくりだな』
「そうかな〜?赤い目は有人君そのまんまだよ」

嬉しそうに笑う顔が何よりも綺麗で。結婚式の時の様にキラキラ光って見える。ドレスを着ていなくても元が美しすぎる。

「大きくなってね」
『名前、まだ決めていなかったな』
「早産だったからね…。もう少し後に決めようかと思ってたんだけど」
『後で一緒に考えよう』
「うん」

暫くはお別れだ。一度部屋から出て、医師からの説明を待った。初めての気持ちに、なんとも形容し難いものが込み上げてくる。本当に、星羅を振り向かせることができて良かったと、今では切に思う。

「旦那様、此方へどうぞ」

医師によると体重はやはり平均よりは下であるらしいが、異常というわけでもないので大丈夫だそうだ。後は妻のケアをという事だったので、これからは星羅一人に任せきりという訳にもいかないだろう。

長い間携帯の電源を切っていたので、着信履歴を確認して掛け直した。

「鬼道だ。ああ、ヒロトか。…どういう事だ…?」
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