第55章 Suggest!〈朝日奈 乃愛〉
高校卒業後、私は国立の医大に進んで、修也は中学や高校時代の活躍が認められ、Jリーグ入りを果たした。
『それじゃ、大学行ってくるね。お弁当、置いておくから』
「ああ」
寝ぼけながら返事してるところを見ると、恐らく返事してる意識が無いんだろうな。昨日も大分激しく交わったせいで、痛い腰を引き摺って大学へ行く。
「あ、おはよ。乃愛」
『おはよ〜』
「急で悪いんだけどさ、今日、夜空いてないかな?」
『どうしたの?』
「合コンの人数合わせ!駄目かな?」
『えぇ…ごめん、そういうのは…』
「お願い!もう一人人数いないと成立しなくて…!駄目かな?」
『私彼氏いるし…』
「本当!一生のお願い!」
一生のお願いって…。たかが合コン如きで使っちゃあかんでしょ。
『ごめんね』
「お願いだよ〜!」
『うぅ…』
「ね、このと〜り!」
『わ、分かったよ…』
すっごい頼まれるからオッケーしちゃったけど…。これ…修也にバレたらヤバイ。かなりヤバイ。いや、ヤバイなんてもんじゃない。もしかしたら別れるとか言われちゃうかもしれない。今からでも断ろうか…。でも、うんって言って断った時、すっごい困るの知ってるんだよなぁ。
『はぁ…』
何で!私が!合コンに行かなきゃいけないの⁉︎彼氏!居るって!言ってんでしょーが!
『あーもう…』
取り敢えず合コンで変な気を起こされない様にめっちゃラフで行こう。勝負服とか意地でも着ないから。私は引き立て役で十分です。
「じゃあ、18時に駅前のレストランね。宜しく!」
『はぁ〜い…』
こういう時に星羅とか瑠璃が居たら楽に断れたんだろうなぁって思う。今になって知る親友の心強さよ。
〈今日遅くなるから、ご飯食べててね〉
修也にラインを送ってスマホを鞄に放った。今頃修也も練習しているのだろうか。もう、本当申し訳ない。合コン、断ろうかな。いや…一度認めてしまったのは私だ。そういうのは私のポリシーに反する。かと言って修也を裏切るのも…。
「乃愛?講義終わったよ?」
『え?ああ…うん。ありがと』
さて、準備するかぁ。もう、何ならすっぴんで行ってやろうか。あ、もうそれで良いわ。嫌われる位の勢いで行こう。
『さ、行くぞ!』
もう少しで5:45分。待ち合わせの15分前。完璧な時間帯だ。
「乃愛〜!こっちこっち!ってうわ!すっぴん?」
『私彼氏居るから』