第50章 Consist!〈綾織 星羅〉£
「狭いが、大丈夫か?」
『うん、と言ってもキングサイズだから狭いって事は無いと思うけど…』
「そうだな」
『あの、ね。手、繋いでも…良いかな…?』
「ああ」
私よりも少し大きい手が私の手を包み込んでくれる。暖かくて、優しい手。
『迎えにきてくれて、ありがとう…』
「当然の事だ」
『料理の練習もしなきゃね』
「そうだな、イタリアに渡るのは俺とお前しかいない」
『これでもちゃんと料理は出来るんだよ?』
「知っている。教育実習で美味しかったと言った奴が居たからな」
『あ、えっと…蒸しパン、どうしても私の食べたいって言った人が居たから…。丁度食べる気にもなれなかったし…』
凄くむすーってしてる。そんな所も可愛いなぁ。言えば幾らでも作ってあげるのに。
『ふふふ…可愛い…』
「男にあまりそういう事を言うな」
『ごめんね?今度マフィン作ってあげるから、それで許して?』
「…許す」
拗ねてる有人君、初めて見たかも。いつもシャキッとしてて、基本こんなに拗ねた顔しないのに。私にだけ見せてくれる、特別な君。
「イタリアに留学する前に、挙式を開きたい」
『へっ…』
「その点については父さんに相談してある」
『は、速いね…』
「ドレスも選んでおかなくてはいけないな」
『イタリアの大学も受験して良いのかな?』
「ああ。大丈夫だろう」
イタリア語の勉強と英語の勉強ちゃんとやらないと…。イタリアって大学の偏差値っていう概念は無いけど、卒業する迄が大変みたい。
「詳しい事はまた明日だな」
『うん』
「さて、寝るか」
布団を肩まで掛けて、寝る準備に入った。もう少し話したい気もするけど、明日もきっと一杯話せるから。大丈夫だよね。
「疲れているだろうから、早く休んだ方が良いぞ」
『うん、ありがとう』
「続きはまた明日だ」
そっと目を閉じる所を見ていた。きっと有人君も疲れているんだろうなぁ。何か興奮して眠れないし、少しテラスにいようかな。有人君、もう寝ちゃってるし。
『帰ってきたんだなぁ…』
此処から見える夜景、好き。夜の街の部分も此処からだと良く見える。私、結局迷惑かけてばかりだった。でも、これから返していけるなら、全力で返していく。これからは全力で頑張るよ。勉強だって、部活だって。何でこんなに出来るかって言われても、私はきっとこう答える。
『愛する人の為だもの』