第48章 Begin！〈朝日奈 乃愛〉

先生とも相談して、しばらく様子を見よう。あまりに仕事をしない様であれば、先生と共に手を打つ。

『やっぱり春先だとまだ冷え込むな…』
「乃愛ちゃん？」
『星羅…？』
「どうしたの？」
『ちょっとね。星羅、ちょっと話さない？』
「分かった。すみません、少し待ってて下さい」

星羅が車から降りてきた。ずっと話したいと思っていた。星羅とは。

『ねぇ星羅。鬼道君と何があったの？』
「私は…婚約者から外れたの」
『そう…』
「最初は有人君と二人で何とかしようと思ってた。でも…これ以上考えを変えないなら、乃愛ちゃんや瑠璃ちゃんにも…って」
『だから私達に何も話さなかったんだね』
「うん…」

私達を…鬼道君を守る為だったんだね。だから進んで近付かなかった。恐らくそれを鬼道君は既に気付いている。

『私達のこと、大事に思ってくれてありがとう。そういう事なら、私から瑠璃に伝えておく。星羅はそのまま演技を続けて』
「うん、ありがとう。乃愛ちゃんは…どうしてここにいたの？」
『私達に、後輩が出来たでしょ？』
「うん」
『サッカー部のマネージャーにとんでもない子が入ろうとしてる』
「え…？」
『男漁りが目当ての子』
「乃愛ちゃん…気を付けて、もう一人、来るよ…」
『え…？』
「私達を引き剥がした張本人。万里小路って人が居たら…その人だと思って良い」

ヘルプを引き受けたからには、私がサッカー部を守ってみせる。その為に軽音を暫く休む事にしたんだから。

「私に…案がある」
『え…？』
「これ以上…夢を追いかけるサッカー選手に辛い思いをしてほしくない。私も陰ながら協力する」
『絶対…これ以上酷くしたくない。サッカーは、夢がある。男を見つける為に夢を追いかける選手を邪魔して欲しくない』
「案について説明するよ。先生に説明して、入部テストを設けるのはどうかな」
『成る程…サッカーを本当に愛しているかを見分けるって事？』
「そういう事」
『分かった。ちょっと相談してみる』

それが一番良い。これしか…道が無い。折角勝ち取った世界一のチームで学んできた事を無駄にしたく無い！

『ありがとう。一緒に考えてくれて。…それに、星羅が元気そうで良かった』
「実はね、『迎えに来る』って有人君が言ってくれたから。信じて待とうと思って」
『そっか。それじゃあ、また明日ね。星羅』
「うん、バイバイ」