第47章 FFHI Ⅹ〈綾織 星羅〉
ーー終業式
もうすぐ私達は二年生になる。其々に複雑な想いを抱いて進級する。あれ以来、一言も有人君とは話していない。その方が安全だと分かっていたから、私は進んで近付かなかった。
「ねぇ…綾織さんって鬼道君と別れたんだってー!」
「じゃあ、俺にもチャンス到来⁉︎」
「あんたには無理」
案外、噂が出回るのは早いなぁと思いつつ、知らないそぶりで終業式が始まるのを待った。
「えーくれぐれも、交通事故には注意してー…」
毎回大体同じ様なことしか言ってない校長の言葉を聞き流して、昨日会った環奈ちゃんについて考えていた。
〈じゃあ、今からもっと好きにさせてあげる!〉
あの子は…大きくなったら一体どんな子に育っているんだろう。あの子の成長の為にも、私はあの子に色んな事を知って欲しい。
「起立、礼」
「よっしゃー!休みだー!」
そっか…休みか…。宿題はあるけど、そんなに量は多くないし、多少ゆっくり出来そう。ライオコット島から帰ってきて、サッカー部のマネージャーも辞めた。あれ以上、近付かない為に。
「あ、綾織さん…!」
『は、はい?』
「あの、ついて来てくれますか!」
『はい…?』
終業式が終わって、流されるままについて来てみれば、校舎裏だった。
『あの…?』
「鬼道君と別れたと聞いたので…俺と、付き合って下さい…!」
『えっと…ごめんなさい…?』
「やっぱり、まだ付き合っているんですか?」
『さぁ…?』
「さぁ…って…」
『取り敢えずは…ごめんなさい…』
「理由を…聞かせて下さい」
理由って言われてもなぁ…。まだ、そういう色事を始める気になれないし…何より、少しゆっくりしたい。
『そういう気になれなくて…』
「そう…ですか…」
お断りした。現に、自分が一番有人君の事を忘れられないでいた。こんなモヤモヤした気持ちで仮にも他の人と付き合うなんてそんな失礼な事したくない。
「お待ちしておりました、お嬢様」
『ありがとうございます』
「有人様からこれを預かっております」
『有人君から…』
〈絶対に迎えに来る〉
ただ一言だけ添えてあった。君って言う人は如何して…。ううん、君を信じても良い?もう一度、君と一緒にいる未来を想像しても…良いかな。
『有人君…』
「良かったですね、お嬢様」
『ええ。そうですね…』
待ってるよ。君が迎えに来るのをずっと待ってる。