第47章 FFHI Ⅹ〈綾織 星羅〉
遂に決勝戦に勝った私達は、勝利の喜びを分かち合った。私達も感極まって涙を零してしまった。
「ねぇ星羅!私達…世界一なんだよ!」
『うん…うん!』
「瑠璃もきっと見てるよね」
『見てるよ!絶対!』
私達は…世界一。もう、てっぺんに居るんだ。
『世界で…いちばん…』
「星羅。ついて来てくれるか」
『…うん』
そうだ、有人君から伝えたい事があるって聞かされてた。何なんだろう…伝えたい事って。
「伝えたい事があると言ったのは覚えているか」
『勿論、覚えてるよ』
「その事で話があるんだ」
自らゴーグルを取った。よっぽど真剣な話なんだろうな…。
「俺は…高校を卒業したら、イタリアのリーグに行く事が決まったんだ」
『イタリア…⁉︎』
「そうだ。だから…高校を卒業したら、イタリアについて来て欲しい」
驚いたけど…それだけ有人君が頑張ってるって事なんだ…!本当は、うんって言いたいのに。言えないのがこんなに苦しいなんて。
『…ごめん…なさい』
「あの件は…」
『駄目だよ。私のわがままで、大勢の人を振り回す訳にはいかないから…』
「それはっ…」
『本当に…ごめんなさい…』
何も言いたくなくてその場から逃げ出した。やっぱり、無理だった。これで…合ってるんだよね…?間違ってない…よね…?
『古株さん!』
「おお、どうした」
『一足先に日本に帰らせて下さい。監督に許可は貰ってきました!』
「わ、分かった。乗れ」
ライオコット島。楽しかった。それでも、辛い事もいっぱいあった。先に運転手さんには連絡しておいたから、空港に直接迎えに来てもらうに頼んである。
『楽しかったよ。有人君。素敵な思い出を…ありがとう…』
日本とライオコット島はそんなに離れていないから、五時間位で着いてしまう。
「お嬢様。お待ちしておりました」
『ありがとうございます。前に行った、新しい家に向かって下さい』
「有人様は宜しいのですか?」
『仕方ないんです。皆を守る為ですから。もう二度と、大切な親友達を危険に晒したく無いんです』
夜空に浮かぶ月が見えた。三日月が綺麗に輝いている。
「着きました。お嬢様」
『ありがとうございます。それでは、失礼しますね』
荷物を引っ提げて、家に向かった。殆ど誰も居ないせいかシーンと静まり返っていた。
「お嬢様、お荷物お持ちいたします」
『ありがとうございます』