第46章 FFHI Ⅸ〈天晶 瑠璃〉
「驚いた?」
『そりゃもう。びっくりだよ』
「私は、瑠璃ちゃんが入院してる方がびっくりなんだけど」
『まぁ…これは一種の事故で…』
「瑠璃ちゃん、やりそう」
『良く言われる』
そう、かなりのおっちょこちょいだって。でも、今回はおっちょこちょいの度合いを過ぎてるかな。
『秋ちゃんが自分で決めた事なら、私は何も言わない』
「瑠璃ちゃんも私達みたいな感じだったんでしょ?」
『まぁね。否定はしないかな』
言われて始めた恋。確かに、人々には批判されるかもしれない。でも、それでも変わった。秋ちゃんにも、変わって欲しい。いつか、本気で一之瀬君を好きになって欲しい。
『いつか分かるよ。この気持ち』
「…そうね」
『最初はそんなに気にしてないのに、ズブズブと沼に嵌ってくの。もう、抜け出せないくらいに深く嵌っていく。でもそれを不快と思えないんだから不思議なんだ』
後少しで付き合ってから一年が経つ。一年でこんなにも変わって行った。目まぐるしい位に、とても速く。
「私、もう行くね。一之瀬君の所に行ってくる」
『うん。励ましてあげて』
すると円堂君がもう一度病室に入ってきた。
「秋と知り合いなのか?」
『親戚なんだ。秋ちゃんとは』
「そうか」
『決勝進出、おめでとう。キャプテン』
「ああ、ありがとな!」
『何だか元気ないね』
「俺、何も見えてなかったんだ。仲間の事、全然」
キャプテンだって、成長してる。だから色んなことが見えてくる。
『それだけ成長してるんだよ。成長してるから周りの状況が見えてくる。これからだよ。キャプテン。此処でウジウジして立ち止まるか、その成長を実りある物にするか』
「お前…何だか長老臭いな」
『えっ…酷い。折角アドバイスあげたのに』
「まっ、ありがとな!」
そのままじゃあなと手を振って円堂君は行ってしまった。長老臭いって初めて言われた。おばあちゃんっては良く言われるけど。
「瑠璃」
『ヒロト君、決勝進出おめでとう』
「ありがとう」
『後半から、何かあったの?』
「皆、ユニコーンのマネージャーの事ばかり気にしていたんだ」
『まぁ、無理もないと思うけど』
「言ったんだ。瑠璃に、努力の全てをぶつけてこいって言われただろって」
確かに言った。だって、手を抜いて勝ち上がれるほど頂点への門は狭く無い事は分かっている。
「瑠璃、聞きたいことがあったんだ」