第42章 FFHI Ⅵ〈綾織 星羅〉
「脅してきたのなら…脅迫罪で訴えるのが一番の手だ」
『それで本当に何とかなるの…?』
「分からない。だが、何とかするしかないだろう」
『どうして…』
「どうしても何も、お前が好きだからだ。それを邪魔する奴らを俺は許さない」
こんなに一途に想ってくれてる君を私は蔑ろにしようとしてた。なんて恥ずかしい事をしようとしてたんだろう。
『ごめんね…私…有人君に嫌いって…』
「気にしてない。本心じゃないのは分かっていたからな。それに…俺の方が謝らなければならない」
『え…?』
「バレンタインの日、お前の意思も汲み取ってやれなくて済まなかった…」
『ううん。自分でも、ちょっと大胆すぎたかなって思ってて…』
「今からでなら返せるが…良いか…?」
『えっと…その…』
まさか、こんな事になるだなんて。そっちの方は全然心構えしてなかった。
「すまない。突然だったか」
『ううん。して…欲しい…』
ゆっくりとゴーグルを外した。皆有人君の事怖いって言うけれど、全然そんな事ない。寧ろ優しいを通り越してる人間だと思う。
「お前がこの手の内から居なくなったらと思うと不安で仕方がない。其れ位…愛しているんだ」
『そんなんじゃ…私が居なくなったらどうするの…』
「間違いなくおかしくなるだろうな」
『もう…しっかりしてよ。司令塔さん?』
「きっとこんなに俺が司令塔としてやっていけてるのは、お前が居たからだろうな」
『駄目だよ。自立しないと…』
「もう少し…待ってくれ」
『ん、ちょっとまっ…んぅ…』
「甘い…」
久しぶりに晴れた心でキスをした。ねぇ、神様。いるのなら、時間を止めて下さい。私、ずっとこの人と一緒に居たい。隣にいて、支えてあげたい。初めてそう思える人に出会えたから。
『好き…大好き…』
「もう、止まらないぞ」
『止めないで…』
止めないで。ずっと一緒に居て。離れないで。将来も、おじいちゃんとおばあちゃんになっても、ずっとずっと一緒に居たい。
「もう、邪魔させない。誰にも…」
『うん…』
深い深いキスからは、有人君の想いがダイレクトに伝わってくる。指と指を絡ませれば、余計に伝わってくる。骨張った男の子の手が、ゆっくりと私の手を包み込む。
『もっと…』
「ああ」
求める度に、少しの不安がのしかかってくる。これでいいのか。でも、この時だけは、忘れさせて…。