第36章 FFHI II〈朝日奈 乃愛〉
『実際両片想いだったんだけどね』
バインダーを後ろ手に持ちながら苦笑いをした。両片想いだったならあの期間は何だったんだろうって思うけど…でも、あの期間も実は大切なものだったりする。
「ま、確かにアフロディや豪炎寺が放っておかないのも分かる気がするぜ」
「言っておくが、渡さないからな」
「まっさか!豪炎寺がいたら勝てる気しねぇからな!」
綱海君がそう言って去って行く。いちいち反応しなくて良いってば…。渡さないも何も、靡きません。
『メンバー発表は体育館だし、早く行こうよ』
「そうだな」
『あ、そうだ。明日休みだったよね?ちゃんと開けといてね!』
「?」
『私からの大事なプレゼント、貰いたくないなら良いけど』
「ちゃんと開けてあるから安心しろ」
『よろしい』
明日は、バレンタインデー。ちゃんとチョコも作ってあるんだから。
『なんか、明日がイナズマジャパンの休学期間に含まれてて良かった』
「バレンタインデーか」
『あ、気付いてた?だって彼女としては複雑じゃん』
「今年からは貰わない」
『へ…?』
なんか、修也ってそういう他人からの気持ちとか結構大事にする人だと思ってた。
「一番大切にしたいのはお前の気持ちだ。他人から貰う事で傷つくなら俺は受け取らない」
『別に傷付く迄はいかないけど…。なんか、意外だね。修也がそんなこと言うなんて』
「そうか?」
『うん。いや、別に良いよ?貰っても。私のが一番大事だって思って貰えればそれで良いし…』
「それでも俺は貰わない。他の人から受け取ったらお前と同等という事になってしまうからな」
『ありがと。私の気持ちを大切にするのも良いけど、やっぱり自分の気持ちが一番大切だよ。どうしたいかは、やっぱり自分で決めなきゃ意味ないんだから。でも、そういう風に言ってくれたのは少し嬉しかった』
覗き込みながらありがとうって声をかけると、いつものようにフッと笑みを返された。変わんないなぁ…。
『じゃ、運命の選抜メンバーを聞きに行きますか』
「ああ、そうだな」
後悔はしてないって顔に書いてあるから、多分大丈夫。どんな結果であろうと、彼はそれを受け止める筈だから。私は何があっても修也の味方だから、勿論選手になる事を祈ってる。それに信じてる。今迄やってきた修也の努力を。
「これから、イナズマジャパン選抜メンバーを発表する」