第36章 FFHI II〈朝日奈 乃愛〉
流石、中学時代に日本代表になっていた人が多いからか、ぶつかり合う事は無かった。
「よーし!来い!」
皆漲ってるなぁ…。やる気十分だし、きっといい関係なんだろうな。中学の時は色々と波乱だったって聞いたし、今年はそんな事ないと思うけど。
「皆凄いね」
『そうだね。まぁ、中学の時も選ばれてたって聞いたし、仲は良いんだよね』
「本当だね。明王君もそこそこに仲良くやってるみたいだし」
『あはは…』
多分、不動君がそんな嫌味な奴になってないのは椿姫ちゃんが居るからだと思うけど…。
「豪炎寺君とは離れちゃったけど、大丈夫?」
『大丈夫じゃない?サッカーしてる時は、サッカーだけを考えてるって本人言ってたし。私は心配してないよ。それに、分け方は公平なあみだくじだし』
「そっか…」
『不動君が心配?』
「本当はね。でも、根は凄く良い人っていうのを皆分かってるって信じてるから」
『なら、信じる事が今の椿姫に出来る事だよ』
「うん…!」
椿の様な真紅の髪が風に揺れた。流石、櫻小路家のお嬢様なだけあって髪質はサラッサラである。座っている姿も同性ではありながらも美しいなと思う。
『今日はこれで終わり!』
ホイッスルを鳴らして高らかに告げた。皆結構疲れている様だったから、ドリンクを渡した。
『皆お疲れ!気を付けて帰ってね』
「乃愛」
『あ、アフロディもお疲れ。どうかした?』
「いや、マネージャーの仕事を手伝おうと思ってね」
『良いの?ありがと。じゃ、これ運ぶの手伝ってくれない?』
「勿論だよ。行こうか」
『うん、椿姫!ボールの籠戻したら後は大丈夫だよ!』
「分かった!ありがとう!」
アフロディと一緒に選手の分のボトルとクーラーボックス。辛そうな顔する事なくひょいっと持ち上げてるから、何気力はあるんだなぁとは思う。
『そういえば、アフロディって前は韓国代表のチームだったんだよね?』
「ああ。でも、日本の高校に行きたかったからね。戻ってきたんだ」
『そっか。でも、正解だよ。日本の高校楽しいでしょ?』
「ああ。毎日充実しているよ」
日本では高校と言ったらザ・青春って感じだし。凄い楽しいと思う。
「乃愛、実は君に伝えたい事があったんだ」
『あ、そうなの?私何か忘れてたっけ?』
「いや、そういう訳じゃ無いんだ。個人的にね」
『?』
「僕は、君の事が好きだよ。乃愛」