第35章 FFHI I 〈天晶 瑠璃〉
「それは悪かったね、吹雪君」
「ううん、良いんだ。二人って凄く仲が良いんだね。幼馴染?」
『ううん。付き合ってるの』
「え、そうなの?道理で名前で呼んでたんだね」
「元は俺の片想いだけど」
「意外だね。ヒロト君が…」
確かに、こんな飄々とした顔で裏では結構大変な事考えてるし。
「そうかな」
『あれ、そういえば吹雪君って北海道から来たんだよね?今日はこれから何処に泊まるの?』
「うん、お日さま園にお世話になる事になってるんだ」
『そうなの?ヒロト君』
「そうだよ。風介や晴矢にお願いしてたんだけど、忘れていたみたいだね」
「二人の時間を邪魔してごめんね。僕も着いて行って良いかな」
「勿論。瑠璃も良いかな」
『うん、良いよ。というか、私此処で曲がるから、ヒロト君ちゃんと案内してあげてね』
「ああ。それじゃあ瑠璃、また明日」
手を振って分かれた。吹雪君が不思議そうな顔をしている。まぁ…そうなっても仕方ない。
『吹雪君』
手招きをして吹雪君を呼んだ。
『ヒロト君には訳あって最近送って貰わない様にしてるの。だから、吹雪君には帰り道ヒロト君が寄り道して練習しないか見ててくれると嬉しいな』
「…分かった。任せてよ」
「…?」
『じゃあね、ヒロト君』
「ああ」
吹雪君も深くは聞かずに納得してくれたみたいだし、彼に任せて問題ないだろう。唯でさえ危ない状況にあるのに、これ以上無理させる訳にはいかない。
「お姉ちゃん」
『藍。今帰りなの?』
「うん、お姉ちゃんが見えたから」
『そっか。部活はどうだった?』
「うん、いつも通り頑張ったよ。お姉ちゃんは、明日から日本代表のマネージャーとして休学する事になってるよね」
『そうそう。代表選考試合が終わったら暫くはお家に帰ってこないから、藍が面倒見てくれると嬉しいな』
「うん、任せて。お姉ちゃんがちゃんとやってくれるって皆信じてるから」
『藍。こういうのはそこそこにやるのも大事だよ。ちゃんとやろうとばっかり思ってるといつか倒れちゃうんだから』
「…うん」
藍は特にその傾向が強い。社会人になったら社畜という人種になりそうで怖いなぁ。
『今日は夕飯なんだと思う?』
「うーん、シチュー?」
『残念、カレーでした』
「何で分かるの?」
『匂い!』
偶には妹達と話すの忘れずに。私は、皆が笑顔でいてくれればそれでいいんだから。