第34章 Swear!〈綾織 星羅〉£
季節はもう雪が降る頃合い。いつも前を通るお店にはメリークリスマスと書かれた飾りがこれからのイベントを主張している。
『クリスマス…かぁ…』
有人君にはいつもお世話になってるし、何かプレゼントをあげたいな…。何か良いもの無いかな…。
「お帰り、星羅」
『ただいま、有人君』
「どこに行ってたんだ?」
『ちょっと、ね』
「…そうか。冷えるだろう。部屋に暖房を付けておいたから、温かいはずだ」
『ありがとう。私、着替えてくるね』
「ああ」
今日も今日とて何かプレゼントに良いものは無いか見て回ってみたけど、やっぱりどうしたら良いのか分からない。これだけは、やっぱり自分で決めたい。一番近くにいる存在だからこそ、自分で悩んで決めたい。
『どうしよう…』
「…星羅、いるのか」
急いで見ていた本をベッドの下に投げ入れた。バレたら意味がない。
『う、うん!』
「入るぞ」
そろそろ本当に25日になっちゃう…。早く決めないと、何も気持ちを伝えられずに終わってしまう事になる。それだけは絶対に嫌だ。
「何か…悩んでいるのか?」
『え?う、ううん!何も!』
「それなら良いが…」
『そういえば、何か用事?』
「ああ。お前にこれが届いていたからな」
『あ、ありがとう。FFHIの書類だよね』
「どうやらそうみたいだな」
FFHIの前に立ちはだかるのは恋人達には欠かせないクリスマス。待って…どうすれば良いの?プレゼント早く決めたいよ…。それとなく聞いてみる…?
『あ、あの、有人君…!』
「なんだ?」
『有人君が貰って嬉しい物って…あるかな?』
「俺は、お前が隣に居てくれればそれで良い」
あああ、違うんです…!ありがとうございます!でも違うんです!そういう事じゃなくて!嬉しいけど!違う!
『あ、敢えて言うなら…?』
「そうだな…俺は何でも良いな。貰って困る物以外なら何でも」
来た!何でも良い!それが一番迷うんですよ!分かったよ神様、自分で決めろって事なんだね⁉︎うん、分かったよ⁉︎
『そっか』
「ああ。用件はそれだけなんだ」
『う、うん』
「また、夕食の時だな」
『そうだね』
そう言って有人君は部屋から出て行く。どうしよう、手がかりゼロなんだけど…。まあでも、貰って嬉しい物言ってって言われてもパッとは思い付かないかもしれない。
『やっぱりスペシャリストに聞くしかないか…』