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Break! 【イナズマイレブン】

第4章 Shoot! 〈天晶 瑠璃〉


『それまで続けていたバレエも、金銭的な理由から諦めたの。親戚のおじさんやおばさんにも続けて良いって言われた。けれど、一番辛いのは私じゃない。幼くして親を亡くした妹達なんだ』
「それは…」
『妹達が悲しんでいるのに、私だけ好きな物に逃げるのはダメだもん』
「それは逃げた事にはならない」
『違うよ…。皆お父さんとお母さんのお葬式で気が狂う程泣いてた。私は、泣けなかった。一番苦しいのは私じゃないから』
「それは君の固定概念だ」

…言われてみればそうだ。私は、一番辛いのは私じゃないから、皆の方がもっと辛いからって抑え込んできた。でもそれは。

『そう…だよね。でもね、私に甘えは許されないから』
「なら、誰か違う人に甘えれば良い。家族でなくたって、誰か違う人に」
『なら、君に甘えようかな…な〜んて』
「いいよ」
『え?』
「君がそうしたいなら、僕はいつだって」

君は、どうしてそんな事言うの。吸い込まれそうな深緑の瞳。逃げられないのは…どうして。私は、こういうのは…苦手なのに、逃げられない。捕まえられたような、そんな気分。

「捕まえた。なんてね」
『!』
「お姉ちゃん、帰ろー!」
『う、うん。それじゃあ、ヒロト君、バイバイ』
「ああ。また明日だね」

怖くはない、けど。一度捕まえられたらもう逃げられそうにない、そんな気がする。

「見てたわよ」
『あなた、誰ですか?』

自然と兄妹達を守る姿勢に出る。

「私はこういうものよ」

女の人は名刺を取り出した。名刺には「蓮見バレエスクール」と書いてある。バレエスクール…。もう縁のないものだと思っていたけど。

『私はバレエスクールに入るつもりはありません。どこのスクールにだって…』
「あなたがお金を払う必要はないわ」
『どういうことですか』
「私があなたに無償でレッスンを提供するわ」
『…!』
「考えてみて」

女の人は去っていく。私には、こんな…。

「お姉ちゃん?」
『ああ、ごめんね。帰ろうか』

バレエスクール…。本当はやってみたい。妹達が寝たらおじさん達に…。いや、只でさえ養ってもらってるのに、これ以上…。でもあの人はレッスンを無償で提供するって言った。

「ただいま〜」
『すみません。遅くなっちゃいました。ご飯手伝います』
「大丈夫よ。皆着替えてきなさい」
「は〜い」
『…あの、おばさん、皆が寝たら話があるんです』
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