第30章 Lead! 〈綾織 星羅〉
「星羅…」
『…!』
「ずっと浮かない顔をしているな」
『あれ、今…』
「もう放課後だ」
『あ、そうだ…部活…』
「今日はサッカー部は休みだ」
『あ、そっか…』
自分でも可笑しい位に動揺している。駄目だ…こんなんじゃ、駄目なのに…。
「帰るか」
『ごめん、今日日誌あるんだった。先に帰ってて良いよ』
「いや、これくらいなら待っていよう」
『ごめんね…』
「何か…迷っているのか…?」
『…ずっと考えてた。朝から。私の存在意義って何だろう、私が私と言える証拠は何処にあるんだろうって』
分かってる。考えたら考えただけドツボにはまっていく事なんて。それでも、自分が此処にいる理由が欲しい。
「俺は、お前の光だ」
『え…?』
「帝国にいた時から、お前は俺の光だったんだ。正直、高校で同じクラスになれた事が嬉しかった。お前の事がずっと、好きだったからだ」
『そんなに…前から?』
「一目惚れ…だった。俺が生きる理由はお前なんだ。これからもずっと」
私を…生きる理由にしてくれたの…?数ある女性の中から、私を選んでくれた。馬鹿みたい。こんなに、貴方は私を思ってくれたのに。私、こんなちっぽけな事で悩んでたなんて。存在意義なんて…。
『ありがとう、有人君。分かったよ。私の存在意義が有人君だって言う事』
「…!」
『今日の朝で、私の存在そのものが嘘なんじゃないかって思っちゃったの。そんな事、あるはず無いのに。有人君がこんなに沢山愛してくれてるんだから』
無意識に唇が重なった。唇から想いが伝わって、同時に伝える。ごめんね。ありがとう。これからもよろしくね。大好き。全部、織り交ぜて君に伝える。
「お前の想い、伝わった」
『有人君の想いも、伝わったよ』
また、再スタートするんだ。きっと、私達は心が繋がってる。切っても切っても切れない糸で繋がってる。
『大好き…』
「俺もだ」
四月から、いろいろな事があって、自分が大怪我をした時もあった。それでも、充実してた。乃愛ちゃんや瑠璃ちゃんと笑って、泣いて。有人君と付き合って、キスをして。半年間が凄く濃密な時間で、きっとこれからもそんな時間が続いていく。私は、そんな時間を君と過ごして行くんだ。
「帰るか」
『…うん!』
これから、君と笑って、泣いて。時にはケンカしたりして。それでも強く、気高く。一緒の道を歩いて行ける様に頑張るから。