第29章 Fly!〈基山 ヒロト〉
綾織さんの救出の時は声を変えていたから全く分からなかった。
「その天晶 瑠璃っていう女の事は私達に任せてくれないか」
『…え?』
任せるって言ったってこの少女と少年に何が…。
「聞いた事無いか?怪盗」
『怪盗…』
今凄く人気なのは知っていた。今は確か大手企業の奥村なんとかって人を狙っているとか何とか。
「怪盗に…頼む」
何かが引っ掛かった。たかが高校生で怪盗に繋がりがあるとは思えない。俺の見解としては、この人達自身が怪盗としか思えない。その方が辻褄が合う。
『君は確か、メジエドの創始者と言ったね』
「ああ、そうだ」
今年八月、怪盗はメジエドを改心させたとして日本中を大いに沸かせた。だが、そのメジエドの創始者である事を名乗っている事を見ると、この人が怪盗に挑戦状を送った訳ではない。しかし、怪盗が実際にメジエドを潰した訳では無かった筈だ。となると、怪盗の情報担当みたいな人がやったと考える方が無難だ。そして、その情報担当がこの子であり、その怪盗のリーダーがこの癖っ毛の人な筈だ。
『君達が…怪盗なんだろ?』
「…!」
「何で…分かったんだ?」
『君達の発言を辿れば分かる事だよ。一番の決め手は君がメジエドの創始者と名乗った所だね』
「相当頭がキレるみたいだな」
『一応、東京では偏差値そこそこ高めの所にはいるからね』
「それで、どうなんだ?」
『分かったよ。君達に任せる。その代わり、僕にも協力させて欲しい』
元はと言えば、此れは俺と瑠璃の問題だ。なるだけ自分で解決したい。
「どうする…?」
「俺は、この人も連れて行くべきだと思う。この頭脳は凄く頼りになるし、少なからずこの人の力が必要になる時が来る筈だ」
「分かった。私達はまず情報収集をしなくちゃならない。その為にはお前の力がいると思う。後で日時と場所を送るから、来てくれ」
『ああ。君達を信じるよ』
怪盗…。どんな人達かと思えば自分と殆ど歳が変わらない人達だっただなんて。何か…秘密があるのか?
「パレスには連れて行けそうか?」
「分からない…。ただ、前に一般人がパレスに出入り出来た事象があった筈だから入れても可笑しくは無い」
『パレス?』
一般的にはパレスとは宮殿を意味するけど…そんな所、東京にあっただろうか。
「いや、何も無いんだ。それじゃ」
取り戻す。瑠璃が居なければ俺は無いも同然なのだから。