第20章 Hold! 〈朝日奈 乃愛〉
『う、うーん。それだけじゃ何とも…』
「だって、お姉ちゃん試合見に来た時、いつもより嬉しそうだったもん」
『そ、そっか…』
豪炎寺も、結構前から…。いやいや、今は考えるとにやけちゃうから、考えるのやめよ。夕香ちゃんと遊んだら、結構時間経ってたからご飯を作る事にした。
「今日は何作るの?」
『今日は、カレーにしようかな』
「わぁ!やったぁ!」
夕香ちゃんも喜んでくれたみたいで良かった。材料もサクサク切っていき、鍋に投入。後はルーを入れて煮込むだけ。
「夕香トイレ行ってくる!」
夕香ちゃんがトイレに行って、煮込んでいる間も暇だから修也を起こそうと近付いた。
「修也、起きて」
熟睡してるのか、全く起きる気配はない。よっぽど疲れてるんだろうか。今ならしらばっくれてキスしてもバレないんじゃないかって思い始めてる私がいる。誰も見てないし、良いよね。そっと、無防備な唇に口付けた。
「甘い」
『…!』
腕を掴まれて更に深くキスされる。起きてたの…?
『んっ…んむぅ…』
「俺に不意打ちかけるのは百年早いな」
『起きてたの…?』
「ああ、揺さぶられた時にな」
うわ…策士じゃん。やられた…。
「お姉ちゃん?」
『あ、夕香ちゃん。何でも無いよ。もうそろそろご飯できるから』
「本当⁉︎夕香準備するね!」
び、びっくりした…!一瞬見られたんじゃ無いかと思っちゃった。落ち着いてご飯にカレーをよそった。久し振りに三人で食べる夕飯は一等美味しく感じる。その後は夕香ちゃんをお風呂に入れて、寝かせて、リビングに戻ってきた。
「助かる」
『良いの良いの。夕香ちゃん可愛いし』
「学校の方は明日から行けるのか?」
『うん。本当は今日退学届出しに行こうかなって思ってたんだけど、出せなくて』
「…そうか」
『やっぱりさ、せっかく色んな人に出会えて、好きな人にまで会えたのに、離れるってなったら苦しくて。だから出せなかったの』
そんな簡単にはい、さよならって言えたら人生苦労はしない。まだまだ、両親とは価値観の相違がある。
『皆と一緒に居るのが凄く楽しかったから』
「そうだな」
『勿論、修也と一緒に居るのも』
何も言わずにこっちを見つめてフッと笑う姿が実は凄い好きだ。そのまま近付いてきてキスをされた。
『…好き』
「俺もだ」
まだキスには慣れないけど、彼女として頑張るから。