第17章 Bleed! 〈朝日奈 乃愛〉
まだ、頭が混乱していて先にお風呂にも入らせて貰った。忘れたくて早々に目を閉じる。やっぱり疲れは感じているようで、眠気が襲ってきた。
ドアの開く音に少し反応した。誰か、入ってきたのかな。
「朝日奈…」
豪炎寺の声…。夢かな。豪炎寺はきっと寝てる間に入ってきたりする筈無いし…。
「俺が、守るべきだったのに…」
悔やんでるの?大丈夫だよ。豪炎寺は助けてくれた。私はそれだけで嬉しかったんだから。
『大丈夫…だよ…?』
ぼうっとした頭で言葉を紡いだ。豪炎寺は驚いた顔で見つめていたけど、きっと夢だよ。だって現実はこんなに近付いてくれない。
「消毒、させてくれ」
暗闇が近付いてくる。豪炎寺の顔…?
『んっ…』
キス、してる?夢の中で、キスしてるの…?嬉しい。君と、夢の中でだけどキスできるなんて。
『えへへ…嬉しいな。豪炎寺と、夢の中でキスしてる』
その言葉と共にまた急な眠気が襲ってきて、意識が閉じた。
ーー翌日
「朝日奈、起きてるか」
『んぅ…ん?あ、おはよ…豪炎寺』
「ああ、お粥を作っておいたから、食欲があれば食べてくれ」
『ありがと。ごめんね、今日は…』
「大丈夫だ。ゆっくり休んでくれ」
『うん。お父さんは?』
「もう出た。俺と夕香しか残ってない」
『そっか。せめて見送る位はするよ。夜はご飯作って待ってるから』
「良いのか?」
『大丈夫』
そう言って立ち上がった。足を捻挫した事を忘れて普通に踏み込んでしまった。地味に痛い。
「大丈夫か」
『あーうん。捻挫してたの忘れてた』
「取り敢えず、俺は行くから、無理はしないでくれ」
『ありがと』
玄関に向かって、歩いた。夕香ちゃんも準備万全のようで、朝からぴょんぴょんしている。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
『うん。ごめんね心配かけて。行ってらっしゃい』
「うん、行ってきまーす!」
「行ってくる」
『うん、気を付けてね』
取り敢えずは豪炎寺が作ってくれたお粥を食べよう。その前に写真撮っとこ。もしかしたら二度と拝めないかもしれない豪炎寺のお粥を写真に収めておきたい。パシャリと一枚撮ってからそっと一口食べた。え、普通に美味しい。流石お兄ちゃん…!
今日は、取り敢えず安静にして、やれる事をやる。最初、ダメ元で警察に持って行って、その後弁護士に頼んでみよう。証拠は豪炎寺が写真撮ってくれたみたい。