第16章 Freeze! 〈天晶 瑠璃〉
手を洗って、髪も整えてトイレを出た。
『ヒロト君、待っててくれてありがとう』
「いや、大丈夫だよ」
『帰ろうか』
「ああ」
うーん、さっきの事言って良いのか、言わない方が良いのか。正直凄く嬉しかった。実際、頼り甲斐のある彼女かと言われれば、そうじゃないと思う。尽くす系の女子に比べれば全く及ばないだろう。
「気にしてる?」
『え…?』
「聞いてたんだろ?」
『…』
そんな深妙な顔をしていただろうか。顔にはあまりでないタイプだとは思っていたんだけど。
「本当にそう思ってるか疑ってる」
『疑ってはいない、けど…』
「俺は瑠璃の事、頼り甲斐があるからってだけで選んだ訳じゃない。もちろん、頼り甲斐もある。だけどその他にも優しい所とか、俺のペースに頑張って合わせようとしてる所とか、全部引っくるめて瑠璃が好きなんだ」
『うん』
「だから、人の評価なんて気にしなくて良いんだ。瑠璃は瑠璃のままでいい」
人の評価、か。確かに、気にしたってどうしようもない事だ。気にしなさすぎるのもどうかと思うけど。
『ありがとう。ヒロト君のお陰で元気出た』
「なら良かった」
『私、ヒロト君に会って変わったと思う。凄く、感謝してるの』
「感謝される事なんて何もしてないよ」
『ううん。変わったの。ヒロト君と一緒にいるようになって、もっと自分で考えて行動出来るようになった。彼氏って、妹や弟達とは違う。だからどう接したら良いのか最初はまだよく分かってなかったけど、随分マシになったと思う』
「彼氏って思って貰えるだけで俺は嬉しいんだ」
『私は、ヒロト君に彼女って思って貰えるのが嬉しい』
「最初は俺の片思いだったからね」
『期間凄く短かったけどね』
高校生活一週間くらいでゴールインと言う、とても可笑しい付き合い方をした私達。というのも、一週間ヒロト君の猛アピールを受けたのと、状況が状況故にって所もあったと思う。でも後悔はしていない。
「今だから言うけど、結構状況に付け入ってた所あるから」
『それは思うけど、でもヒロト君と付き合った事後悔なんてしてないよ。こんなに素敵な人にはもう一生出会えないって思うくらいに大切な人だと思ってるから』
なんか隣で悶えてる人いるんですけど…大丈夫ですかね。
『もう!置いてくからね』
「ちょっと待って…!」
『知らないっ!』
いつまで悶えてんの…でも、大好きだよ。