第14章 Catch! 〈天晶 瑠璃〉
すぐに逸らされてしまったけど、仕方ない事だと思う。私だって酷い事言ったって自覚あるし。
「位置に着いて、よーい…」
パァンというピストルの音で一斉に駆け出す。ヒロト君、速い…。中盤辺りに落ちている「形容詞+人」が書かれた紙を拾い上げて、真っ直ぐこっちに向かって走ってきた。何が書いてあるんだろう。
「瑠璃!」
『へ?』
「来て!」
手を引かれて、観客席用のテープを抜けた。乃愛ちゃん達の方を振り返ると親指を立てて、まるで「行ってきな」とでも言っているかのようだった。
『ひ、ヒロト君⁉︎』
「良いから」
「一年六組の基山が一番でゴール!続いて四組の羽山!」
『はぁ…はぁ…』
「カード見せてもらって良いですか?」
「あ、はい」
『何の、お題だったの?』
「秘密」
何なんだろう…。凄い気になるんだけど…。
「一年六組の基山ヒロトが一番で到着しましたが、そのお題は…「好きな人」!」
『ええ!ちょっと、ヒロト君⁉︎』
「だって、俺には瑠璃しかいないから」
『ばか…』
恥ずかしい…!公開処刑なんですけど…。元いた所に戻って来ると皆見て来るし…。
「瑠璃、よかったじゃん」
『乃愛ちゃん…』
「話さなきゃ分かんない事だってあるよ」
『うん…!ちょっと行ってくる!』
ヒロト君に、謝らなきゃ!私、酷い事言っちゃったし、言うべき事もちゃんと言ってなかった!
『ヒロト君!』
「瑠璃…」
『ごめんね、ヒロト君…。さっきは酷い事言っちゃって。私、ヒロト君と他の女の子が話しててもやっとしたし、ヒロト君の事何も分かってない人にヒロト君の事語られるのも嫌だった…!』
「瑠璃。俺も、あの観覧車の時がっつきすぎたなって思って控えようとしてたんだ。だから、髪型の事も気付いていたけど言い出せなくて」
『あの…!観覧車のキスも…嫌じゃなかったし…その…』
「うん、やっぱり我慢しない」
『ちょ、ちょっと⁉︎』
キス…してるんだ…。学校で…。
『ひ、ヒロト君!誰か来ちゃうから…!』
「大丈夫、皆借り人競争に夢中だから」
『ちょ、んん…』
「瑠璃、大好きだよ」
『へ⁉︎』
ど直球すぎる告白に慌てた。びっくりするくらいに素直だから、こっちはどうしたら良いかたまに分からなくなる。
「瑠璃は?」
『わ、私も…好き…』
「うん」
まだヒロト君の素直さに応えられてないけど、好きな気持ちは負けない。