第1章 序章
「リヴァイ兵長、エルヴィン中隊長がお呼びです」
「あぁ。今行く。」
出勤して、自分の机につく間もなく、部下のエルドに呼び止められた。前線部隊といっても、報告書だったり作戦資料だったり少なからずデスクワークもやらなくてはいけない。
リヴァイは、自分の机の上に積み重なった書類を見て、一つ溜息を零すとエルヴィンの部屋へと向かった。
「エルヴィン、俺だ。入るぞ」
「リヴァイ、何回ノックをしろと言ったら分かるんだ」
エルヴィンは半ば諦めなのか、溜息をつきながらこちらに目を向けた。机の上には、自分以上に大量の書類が積み重なっている。
中隊長になると必然的に、デスクワークの比重が重いので、わりと見慣れた光景である。
その中から1つのファイルの抜き取ってリヴァイに渡してきた。
「知っていると思うが、卒業した訓練兵が来月から入ってくる。そのファイルに載っている者たちだ。」
ファイルと言っても厚さは全くない。
それもそのはずだ。GSG-9のテスト期間は10ヶ月間にも及び、内容も相当ハードである。しかも、そもそも対テロ特殊部隊なんて、命の危険が常に付きまとう仕事なんて志願する者自体が少ない。
だいたい志願するやつは、変に正義感が強い死に急ぐタイプか、給料は悪くないから金に釣られたやつか、変人くらいである。
ファイルを特に感情を持たずペラペラ捲っていると、1人の女が目にはいった。
名前は、リラクライン。
鎖骨まであるしなやかな金髪に、宝石のように綺麗な緑色の目。
色白で、写真に写っている範囲では、訓練兵として必要な筋肉があるのか疑わしいくらいのしなやかな体をしている。
訓練兵というよりは、モデルか女優と言った方がしっくりくる容姿である。
俺は何故だかその写真から目が離せなかった。
訓練兵には見えない容姿のせいだけではない、それ以上にその瞳から目が離せないでいた。
…こいつは、人の生き死にを知っている瞳だ。