第1章 序章
『リラクライン、GSG-9第一中隊リヴァイ班に命ずる』
「はっ!」
シャーディス教官の命に、私はこの10ヶ月間の感謝の気持ちも込めて、誠心誠意の敬礼を返した。
長かった。本当に長かった。
敬礼をする私の脳内では今までの記憶が駆け巡った。
ここまで辿り着くのに、2年間州警察で働き実務経験を踏んだ後、GSG-9になる為に10ヶ月間厳しいテストと基礎教育に耐えてきた。
目線を周りに向けてみる。
10ヶ月前と比べると、同期達はだいぶ少なくなった。
志なかばで自ら辞めたもの、訓練中に怪我をして脱落したもの、テストには耐えたが落とされたもの、辞めた理由は様々だが、最後に残った同期の少なさが、このテストの厳しさを物語っている。
そもそもGSG-9とは、世界的に有名なドイツのテロ事件『ミュンヘンオリンピック事件』での失態を反省に作られた、ドイツきっての対テロ特殊部隊の事である。
GSG-9の活躍は世界的に見ても凄まじい。日本のSATも、元はこの部隊を参考に作られたとされている。
そんな特殊部隊に本日をもって私は配属された。
同期の中で女性は私だけだ。
そもそもGSG-9自体、女性の人数が圧倒的に少ない。
いたとしても、配属は本部がほとんどで、前線に配属された女性は、おそらく私が初めてだろう。
この日は、GSG-9の前線部隊に初めて女性が配属された日として大きくニュースで取り上げられた。
そして描いた夢が一歩進んだ日として、私の中に深く刻まれたのであった。